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サムネイル14回

マンタウェイ

 

6月の大潮の日は、朝がおだやかな天気になった。やわらかい南風が吹いているが、

強烈な太陽の光が、海にさしはじめている。こんな日は、GT日和といって良い程、ベイトフィッシュの群れも浮いている。思ったとおり、GTはヒットし、すぐにリリースしてふと目を上げると、水道の中央にマンタ(オニイトマキエイ)が浮いている。

ボートを近づけて、エンジンを切ると遠巻きに周りで、バシャバシャと何匹か浮きだした。2〜3分もすると、はじめちょっぴり警戒をしていたマンタも、平気で近づいて寄ってくるようになったので、一同見とれてしまった。

さっき25kgちょっとのGTを釣り上げたばかりの植野さんも、マンタの泳ぎに見入っている。

良く見ると、そのうちの一匹が海面近くで、くるりと宙返りをした。もう一回やらないかなと思って、カメラを取り出して構えていると、今度は頭を出して、おいでおいでをするような恰好をする。そしてまた、くるりくるりと宙返りをするのである。すかさず何枚もシャッターを押していると、すぐそばまで、黒い背を押し寄せてくる。いつもは、トレバリーを狙っていると、じつにジャマな存在のマンタも、こうなると可愛い。

最近何かに怯えることがあったらしく、ダイバーポイントのリーフエッジに寄らなくなったらしいと、友人のダイバーが嘆いていたことを思い出した。

おかげでヨナラ水道にダイビング船もめっきり少なくなってしまった。トレバリーは釣りやすくなったけれど、少しずつ近寄る海洋汚染は、このマンタの楽園にも忍び寄っているに違いない。 

 

5〜6分すると、ボートはどんどん流され出して、マンタは見えなくなってしまった。

八重山にはマンタが浮いた次の日は雨になるという、言い伝えがある。

実際いつもその通りに、今まではなってきたが、その日の次の日は、無風の、もっと良い天気となった。

 

 

西表島と小浜島の間の大きなチャンネルを、ヨナラ水道という。

この水道は、別名マンタウェイと呼ばれ、1t近い大型のマンタが何十頭も集まってくる。

近年ダイビングのシステムの発展とともに、この流れの早い水道にもダイバーが押し寄せるようになった。

特に「マンタに会いたい」という女性ダイバーに人気があり、全国アンケートで一番になったほどである。 

マンタは学名をオニイトマキエイといって、世界の亜熱帯から熱帯にかけて多く分布している。

大きなものは、4mを越え、1t以上にも成長するが、性格はいたっておとなしく、人間を襲ったりはしないが、あまり近寄ったり、驚かしたりするとドカン、と体当たりをされたりする。

プランクトンイーターで、くるりと海中でまわるのも、プランクトンを集めて一気に呑み込んでしまう、合理的な動きらしい。

時にはトレバリーがよく付いているヤマトイワシやグルクマ等の小型のベイトフィッシュの群れを襲っているところを見かけることがある。それを見る限りでは、おとなしさに隠された激しさがあるみたいである。

これだけ群れをなしている水道も、日本ではめずらしいらしい。

いつまでも、このヨナラ水道が、マンタとトレバリーの楽園であってもらいたいものだ。