23回
キハダマグロ
ジリジリと焦げつくような日差しは、8月に入ると更に強烈になってきた。 僕のように毎日海に出ていても焼けた肌の上から、また焼けてストレートアイスコーヒーみたいな色になって、それ以上は黒くならないけれど、首すじの日焼けは食い込むようなかゆさとも痛さともつかない、ヒリヒリとした感覚で、慢性化してしまう。 こうなると、UV36だろうが45だろうが、どんな強力な日焼け止めを塗っても効かない。 |
5月に入ってきたキハダマグロは、8月の声を聞くと更に大きくなり、漁協には40〜50kgが、ゴロゴロところがりだす。小さい時は、キメジ、沖縄ではシビグワー等と言われ、千葉県沖くらいまで北上するらしい。シイラやカツオをジグで釣っていると、よく混じって釣れるお魚である。 日本のマグロには200〜300kgになるクロマグロムナビレの長いビンナガ、目の大きいメバチ、そしてセビレとムナビレが長く黄色くなり100kg近く成長するキハダがいる。 |
石垣島から1時間くらい船を走らせた所に、パヤオ(浮き漁礁)がある。 浮き漁礁とは、海流の流れのある1000mの海底にアンカーを打ち、そこから長い一本のロープを伸ばして海面に人工海藻や、琉球竹、浮きを付けたものである。 それらに小さな海老や蟹プランクトン等が付き、その近くに小魚が集まり、その周りに小・中・大の回遊魚が立ち寄る。 僕はよくそこを、ロッドテストで利用する。デッドベイト、ルアー、フライで釣ることができるが、やはり日中はデッドベイトに大物がヒットしやすい。 ジグは80〜300g前後のものを150mくらい沈めて、パンピングするか、遠投し、やはり100mくらいカウントダウンして軽くロッドをあおりながら素早くリーリングするなど、いろいろな方法がある。フライは、イワシやキビナゴ等をチャミングして、船の15mくらい周りに、魚を浮かせて寄せる。 それにフライをキャストして、さらにフライの周りにチャミングして、アタリがくるのを待つ。デッドベイトはフックをイワシの口からエラに通して抜き、再びハラから背中に針先を抜いて、小さくポイントを外に通し、アイはエラブタの中にしまい込む。ふわりとキャストして、やはりチャミングを周りにして、完全にベールをフリーにして、どんどんラインを出して行く。ヒットしてラインが走り出しても、10〜20mはそのままもって行かせて、グイとあわせる方法である。 |
300gのジグを投げていると、水深150mくらいの所で、大きなアタリがあった。 鋭く合わせると、ロッドがグーンと、もって行かれたが、はずれてしまった。 隣でデッドベイトを流していた、石垣さんのリールが金属音を発した。 ドラッグ5kgは止まらない「やばいよ、スプールの底が見えてきた。」 「ロッドをたてて、ドラッグを上げろ」とアドバイスすると、魚はようやくスプールにラインを、あと10m残したところで、止まった。 もう一度走られたら、終わりであることがわかっているので、船で追い100mほど、石垣さんは巻き取ることが出来た。 そして再び戦闘開始である。5分が過ぎると、真下に150mほど、魚は潜ってしまっている。 これをリフティングすると、また20mくらい走られる。そしてまたリフティングするのだから、大変である。ロッドをゆっくりおこして、少し待つと、ロッドの弾性でティップが上がりだす。それを素早く巻き取りながら、繰り返しポンピングする。 「こんな、しんどい魚ははじめてだ。」と、かの鉄人、石垣さんも、ばてだして、座り込んでしまった。 |
30分後、魚は30m船の下で回りだした。 「魚は、回りだしたよ」と石垣さんを励ました時、リールのスプールのフロント部が、破裂するように、割れてブっとんでしまったが、ラインは切れていない。仕方なく、30lbラインを持って、ゆっくりと上げると、ショックリーダーが見えてきた。くるくるとまわしながら、更に慎重に魚を浮かせて、ギャフを打った。30kgのキハダである。 「釣り上げたけど、勝負には完全に負けたね」 「フライやルアーでこのサイズが釣れるテクニックが開発されると、面白くなるだろうね」と僕。 船長の中曽根のオジーは、「こんなのは、まだ小さい、小さい」と言う。 「スゲー魚!」と橘文也君。 |
石垣島は、9月いっぱいまで、夏が続き、そして10月の始めに、秋を告げる新北風 (ミーニシ)が吹き出す。まだ当分は夏なんだなアーと思いながら、海面を見ると、強烈な日差しが、真っ白の光で、乱反射させている。水深1000mの紺碧の海は、時折、 どでかいキハダがボコボコと近くでライズしていた。 |
活躍したタックル ROD: GIANT 86 G.TREVALLY8 ライン: エムズクエスト30lb ショックリーダー: サンライン トルネード22号 |