25回
トリヤマ
沖にトリヤマが見えた。 ちょうど弟子の橘文也君の友人、吉田実寛さんと川崎浩さんが遊びに来ていたので、海に出ていた時である。 ヒメアジサシ、セグロアジサシが飛んでいるので、スマとカツオの混じり合った群れである。 トリヤマといっても、トリによって魚の群れが違う。例えば、ヒメアジサシはスマか、イケガツオ、セグロアジサシ、カツオドリはカツオかキハダマグロといった具合である。また、トリが高く飛んでいる時は、大きい魚であるし、群れの進む方向を示す、ナビゲーションバード等、トリヤマといちがいに言っても、いろいろな見方で見ないと、フィッシングチャンスを逃してしまう。 群れの進行方向にボートを走らせてエンジンを切ると、わきたつ海面がどんどんと近づいてくる。 まず吉田さんがヒット。続いて川崎さん。 僕は、まるでエサにしか見えない10gのジグ、クイラ5.5ft、 6Lbラインで群れの中心に向かって投げると、ひったくるようにヒットして小さなリールは悲鳴を上げた。ラインはどんどんと出されて、40m位の所で魚は止まって、潜り始めた。バッドエンドをお腹にあてて、ポンピングを始めると、 「鈴木さん、ウルトラライトでポンピングしたらだめですよ。」と橘文也君が笑いながら冗談を言う。 「ロッドのテストはこうやるのが一番なんだ。」と言い返すと、 「ロッドって、丈夫なものなんですねえ」と今度は感心してしまった。 5分くらいで浮いて来たので、尾っぽをもって、ハンドランディングして、写真をパチリ。すぐにリリースしてやると、ビューン、と勢い良く逃げていった。吉田さんもすで に取り込んでいて、 「カツオもウルトラライトで上がるんですね。」と吉田さんもびっくり。 |
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リーフエッジに戻って、トップを投げていると、川崎さんのクライジースイマー90にドカン!とヒットし、ラインが矢の様に飛び出ていったが、アワセがゆるかったせいかあるいは、口の中にスッポリと収まってしまったかで、途中、無情にもルアーは無傷で浮いてきた。 今度は、1mくらいのGTがまた川崎さんにヒットしたが、リールのベールの所からへし折れて、ラインブレーク。 潮が止まったので、リーフ内に入って、小物を小さなタックルで狙っているとオニヒラアジがまた、川崎さんにヒットした。 橘君がハンドランディングしてリリース。 吉田さんのロッドには、カワハギの一種のクマドリ、橘君のロッドには、イソフエフキ僕の7cmのミノーに9cmのミナミアカエソが釣れたりした。 |
写真左:タンデムのスプーンにマトフエダイ(手前)とモチノウオの一種(後方) 写真右:アミメフエダイ
3時の休みに、泳いでみると、ムラサメモンガラがちょっと遠くに見えたので、近づいてみると、すばやく砂地に掘った穴の中に逃げ込んだ。僕は1mほど潜って、直径15cm,深さ20cmの縦穴を覗き込むと、平べったく完全に横になっている。 頭の青色は、ミドリイシ(サンゴ)に見えるし、あとは、白い砂にサンゴのバラス模様になっていて、まわりと完全に溶け込んでいるので、なるほどなァと感服してしまった。リーフに住む住民(魚)達はそれぞれに工夫をこらして、形や色が進化したのだと、改めて思い知らされた。 |
写真左:ヤマブキベラだと思うのだが、新種かも 写真右:ムネアカクチビ
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ふと海面から東を見ると、積乱雲がどんどんと発達して、下部に雨のカーテンができている。 スコールは段々と、僕たちの方に近づいて来るみたいで、無風だった海面にサラサラと風が見えだしている。 青い空に白い入道雲、どこまでも広がるサンゴの白い砂の浅い礁湖、透き通ったサファイアブルーの美しい海水。 こんな海がいつまでも人間と共存できたらなァーと頭をよぎったが、我々の日本じゃ、ちょっと無理かもしれませんね。 |
テンジクダツ 7cmのミノーに9cmのミナミアカエソ。