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サムネイル31回

スールー海ツバハタ環礁釣り記

 

ツバハタ環礁は、その北の突端に小さな島がある。

「昼頃、上陸してみましょうよ」とコーディネーターの久保さんが言う。

「島は小さいけれど、海鳥がいっぱい居ます。前は足の踏み場が無いぐらい居たみたいですけど。

みんな卵をとってしまって、ずいぶん減ってしまったのだそうです。」と残念そうな顔になった。

潮がかなり速いみたいで、あまり風もないのに母船がギシギシと揺れている。

「朝はGTが、でかいからなぁ。」とルアーをセットしながら、江森さんがつぶやくと、

「ぜいたく言ってらァー」と小林さんがたたみこんだ。ボートは小林艇の方が先に出て母船のすぐ前のリーフ際の潮目の方を攻めだした。

「あれ、もうロッドが2本も曲がっている。」と 景君が指をさしている。

「ちょっと、たぶんヒット数が少ないけれど、静かな方に行ってみようか?」と僕が長く伸びた珊瑚礁の裏側を見ながら、提案すると、メンバーは異存が無いらしい。

ダニーがフラットの海面を快適に飛ばしだした。島に回り込むようにだらだらとした、メリハリの無い珊瑚礁が続いている。潮が動かないのである。しばらく行くと、バラスでできた砂浜が、リーフからの流出し方向に沿うような形で伸びていて、その先が風と同調してさらにべったりと、ぬめぬめ潮目が見える。

 

 

「エモちゃん、ちょっと投げてみなよ」というと、一番前にいた江森さんことエモちゃんが、オレンジ色のロングペン100を、ビューンと投げ、引いたところで、ドカンとヒット。

「波紋が20mぐらい広がってるよ!」後ろで景君がびっくりしている。江森さんが、鋭くフッキングをしながら、魚を止めにかかった。ボートを動かすことなく、3分ほどでGTは浮いた。

25kgである。全員が一匹づつ釣ったところで、母船に戻った。朝食後、すぐにラフウォーターサイドにまわってみた。ちょっと波は高かったが、ダニーとのコンビネーションもばっちりである。

途中、小林艇が朝食を食べにすれ違った時、両手を大きく広げて、手を振っている。大きいのが釣れたのだろう。リーフは延々と何十kmも続いているが、10分くらい走ってから、流れ込みがあったので、キャスティングを開始する。まあこんなことは長いGT生活の中であまり無いことと、前置きしておく。

ビッグペンやロングペン、更にクレイジースイマーといった大物用なので、GTしか出てこないのは、わかる。しかしその出方である。

一つのルアーに3〜4匹ずつ、追いかけてくる。4人で投げているから、平均で10匹以上が常に海面でドタバタ、バッコンとやっているわけで、何かもう一種異様な光景が広がっていた。何匹かランディングすると、さすがの鉄人GTアングラー達も疲れが見えてきて、2〜3人が休みだした。

僕は、更に調子が出てきていて、ほとんど何匹釣り上げても疲れない、フィッシングハイの状態である。ロングペンを使い、ショートパンプで誘うと、ワンキャスト、ワンヒットそれも20kg前後のGTばかりなので、何か夢のようである。

  

 

そのうちハンドルがバキッとねじ切れてしまった。GTのサイズも良いサイズらしく

悠々とエッジを泳いでいる。

「チョットさあ、そこのリールからハンドルとってこれに付けてくれる?」と景君に頼むと、中山さんや景君、エモちゃん、みんな協力してくれだしたが、なかなか付かない。

「ラインを絶対出さないから、ゆっくりやっていいよ」

ダニーが笑って、ボートが風でリーフエッジに寄った分、アウトサイドに動かしてくれた魚はグイグイと引くけれど、自分のボディを上下左右に動かせて、何とかドラッグを出さずに済ませて、ロッドで深みに誘い込んでみた。まあ、ハンドルの無いリールほどみじめなものは無いもので、まぬけである。 

そのうち2分ぐらいで、他のハンドルがみごとに付いた。やっと戦闘開始である。

「めんどくさいから、このまま、ドラッグ出さないで上げてみるね」などと、うそぶいてファイト。魚も疲れているみたいで、直下で少し抵抗したものの、景君がランディングしてくれた。写

真をパチリ、ですぐにリリース。             

  

 

潮・風・時・場所・ルアー・ロッド・システム・心・技・体・運・勘・根と当たりクジや倍役満、万馬券 みたいに、みんな重ならないと、こうならないわけであるからして、誤解なきよう。

まあ新しいメソッドのルアーは、飛躍的にGTのみを引きずり出したようである。

2艇で釣り日3日間で、200本近いGT.をランディングするわけであったが、ちなみに僕は、GT40匹に対してカスミアジが1匹、バラハタが一匹ということになった。

昼食を食べていると、久保さんがやってきて、ちょうど潮が良いから、島に行ってみようということになった。中山さんや梅原さんもいっしょに行くことになって島上陸組がぐんと増えた。

みんな午前中にいい釣りをしたものだから、その余韻を残しつつ、浅いリーフから、カツオドリの島にわたった。

 

 

そういえば、94年3月号で書いたカツオドリ(標識番号R−4)はその後、東海大学の海洋学部、網取研究所、河野先生によって僕らの船に立ち寄った後、2日後にフィリピン方面に渡ったという報告を受けた。もしかしたらその鳥の子孫が、この島にいるのかと思うと、何となく懐かしい気がした。

 

 

イロイロを出発して、5日目にパラワン島、プエルトプリンセサに、朝の6時に入港した。

朝もやがゆっくりと、溶けている。すると緑に包まれた町が姿をあらわす小高い丘の上に鋭く尖ったスペイン風のカソリック教会が見える。船が岸壁に接岸すると どことなく人が集まってきた。ここで、6名のメンバーが日本に帰るわけである。僕はまたこれから更に新しく加わる5名のメンバー、つり吉の小林さん、田村さんと更に一週間の予定でスールー海を、ボルネオ近くの、バンコーラン岩礁へと、南下するわけであるがこの続きはまたの機会にすることにしよう。

 

 

活躍したタックル

ロッド: GIANT86  BIG GAME 86

ルアー: ロングペン100 ビッグペン110

     クレイジースイマー 100

リール:VAN STAAL  VS−300

    PENN 950SS

    ダイワ エンブレム6000H

ライン: バリバス10×10 6号  アバニー 50lb

ショックリーダー: バリバス130〜2001b