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サムネイル39回

ムラク環礁釣紀

港でジンベイザメが泳ぐ島から

 

贅沢な釣り師の船旅
長いスコールである。
波を消し、あたり一面、何もかもグレーに変え、ザーザーといつまでも降り続くかの様な見事な雨といってよい。僕はベッドに横になってうたた寝を決め込んでいる。
北マーレー環礁にあるモルジブの首都の島を、この80ftのマザードーニーに乗って出発し、途中、南マーレー、フェリドゥ環礁の東を入り、既に2日日に入っているが、この雨を避けて、フェリドゥ環礁の南のはずれのインリーフに退避しているのである。
「ここから外洋なので、今夜はここに泊まって、明朝にムラクに船長と相談して入ることにしました。雨が止んだら日没まで、1時間ちょっと明日のウォーミングアップをしましょうよ。」と話し合った。
スコールは4時半頃止んで、モルジブの斜陽は雨の後だけに強い白金光となり、ジリジリと横顔に食い込んでくる。

8名のメンバーは待ち焦がれていたリーフヘ、フィッシング用に用意された小型のドーニーに乗り移り、飛び出して行った。
明朝出航した船は3時間かけてムラク環礁に入ったけれど、ガイドのランジットが、環礁の南のはずれのポイントに行くことを提案したので、ここからさらに2時間かかってしまった。
ムラク環礁は首都マーレーから200マイル南下した環礁群である。この辺はキハダマグロの基地になっている島が多く、リゾート用の島は無い。
「今度はドーニーを先にやっておいて、水上飛行機でコンタクトさせた方がいいようだね。」と時間のかかった船旅に、申し訳なさそうに言うのだが、ぼくとしては、ゆっくりとモルジブの海道を見ることができたので、あまり気にはならなかった。
その上、この大型のマザードーニーは大変居心地がよくて、食事が野菜タップリ、おつゆタップリ、トマトいっぱいのイタリアン風インド料理なので、なかなかである。スピードも12ノットくらいなので、村田基さんも僕も平山さんも、トローリングルアーを流しながら過すわけで、釣り師にとってこれほど贅沢なことはない船旅なのである。
バスフィッシングやテレビでおなじみの村田基さんとは初めての釣り旅なのであるが、道中、卓越した話術で場を盛り上げ、バステクニックの話は多くの学ぶところを得ることができた。まず文面をもって感謝としたい。

 

 

世界一でかい魚?
昼近く、ムラク環礁の南端の名前は判らない島に着いた。その島はたぶん500名ぐらいの人口かと思われるが、町役場みたいなちゃんとした建物があったりして、3日もかけてやって来たとは思えないのである。

その村の港にイカリを下ろしたわけである。

心はすっかりGTフィッシングに飛んでいるのであるが、昼なので、そこで昼食をとってから出発ということになった。食事をとっていると、沖ではイルカが飛んだり跳ねたりしだした。まあそんなことは驚くことでは無い。
食事が終わり、少々の残りを海にポイと投げるとテングトサカハギの大群がやって来て、ペろりとたいらげてくれた。その時にクルーの人が海を見て騒ぎ出した。それをランジットが大声で、
「ビッグフィッシュ!ビッグフィッシュ!」とやったものだから、みんなテーブルからクルーが指をさしている船べりに一目散である。
僕は大きな魚が泳いでいるのは当たり前だと思い、どうせイソマグロか、GTか、マンタであろうとタカをくくり、茶を飲み続けたのである。
「鈴木さんジンベイザメですよ。早く来て!」と上保君が手を振るものだから、あわてて見に行ったら、僕だけ見逃してしまった。

がっかりしていると、今度は後ろでスタッフがまた騒ぎだしたので、一番先に一目散に駆けつけると、10m近いジンベイザメがゆっくりとボートの下を泳いでいくのである。僕はこんなところでジンベイザメが見られるモルジブの自然を、鳥肌のたつ思いで感じた。

 

 

 

 

ロングリーフとショートリーフ
その日は午後から南東側のロングリーフを攻めることになったが、潮通しが悪く、さらに浅いダラダラとしたテラスが拡がっている。10kg前後のGTは次々とヒットするのだが、良型はなかなか上がらない。

それでも上保君と高橋君が20kg オーバーを夕方近くに、ベイトフィッシュの群れの中で、ロングペンのショートパンプで釣り上げた。
夜のミーティングで、すぐに西側へ移動を開始することを僕は提案した。なぜならモルジブの岩礁は、西に位置するモルジブ海領から盛り上がった地殻プレートが、北東側に移動しながら沈み込んでいる。

その上、インド洋の暖流が西から東へ流れ込んでいるので、ほとんどの環礁のGTの好ポイントは西側に多いからである。
次の朝、そのムラク環礁の西側に入ると、やはりリーフが細かく寸断され、各コーナーやチャンネルに多くの好ポイントを見つけることができた。

釣り用の小型ドーニーのクルーも昨年、僕が教えたハンドランディングをマスターしてしまっていたので、今回から、ランディングを任せることができた。その上、海水をせっせとバケツでかけ、クッションシートを敷くといった念の入れようである。素手でテイルバイハンドのランディングをしようとするクルーもいたので、ランディンググローブをプレゼントすると、ますます素早くし始めたのである。
午後に入って僕たちは、同じチャンネルの一つのコーナーを繰り返し攻めることにした。それは、まず、表層にいる10〜15 kg前後のGTがあまりにも多いので、それらをまず釣ってリリースし、さらにロングペンのショートパンプやGTPのパンピングで、エッジの深部にいる大型のGTを浮かせて引きずり出す方法である。
ペンシルの早引きではサウンドが高音すぎるのとルアーが速すぎて、深場のGTを浮かせることは出来ないが、ロングペンのショートパンプやポッパーのポンピングは、サウンドが低周波で、ルアーも遅く、深場のGTには刺激的らしい。
そのうち、黒のロングペン100を使っていた高橋さんに、しびれをきらした超大型のGTが真下から突き上げ、躍り出るような派手なバイトでヒット。
ロッドはきれいな円を描いたものの、4分ほどで35kgのGTは浮いてしまった。一人では上がらないので、何人かでやっと引き上げて、飲み込んだルアーを丹念にはずして、皆で写真をパチリ。すぐにリリースした。

 

 

 

GTフィッシングの後のミルクティー

夕方、またスコールの雨の帯が近づいてきたので、早めにマザードーニーに引き返した。

冷たいシャワーを浴びて、頭からシーブリーズをタップリとふりかけて日焼けした肌の熱をとると、フロントキャビンのテント下にはスタッフが熱いミルクティーを用意していた。

夕食前の一時、8名の参加者が全員集まって楽しい釣り談義に花が咲いたのである。

いつしか雨も上がり、やがて赤紫色にたそがれへと変わるころ、遠くでベイトフィッシュにアタックするGTのバイト音が聞こえてくるのである。

 

 

 

使用タックル

ロッド FISHERMAN B.G.JACK7.8  BIG GAME8.6、GIANT 8.6
ルアー GTP 1O5 クレイジースイマー105 ロングペン100
リール シマノ ステラ10000 ダイワEXi5000、PENN 7500SS
ライン モーリス アヴァニー50Lb