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サムネイル58回

与那国島釣紀

カジキ一番近い島から

 

ラニーニャ
八重山に真夏はすでに訪れていた。今年は6月の末だというのに、まだ台風の発生がなく、このままいくと、日本の気象庁始まって以来の記録になるらしい。
エルニーニョ現象は、南米はエクアドル沖の赤道太平洋の海水温が異常に高くなることから起きる。逆にその海域の海水温が低くなると、ラニーニャといって、これまた世界中に異常気象をもたらす。

今年はどうもそれらしい。先日訪れたビキニ、マジェロ海域が台風の卵、熱帯低気圧が発生する所であるが、ここの海水温が異常に低く、また、八重山諸島あたりの海が暖かすぎる逆転現象が起きていることが原因となっているらしい。
台風が来ないと、珊瑚礁の浅い海域が攪拌されないことになり、海が汚れだす。贅沢を言えば、台風といえども自然に無駄がないということである。
6月の末のミッドウェイ釣行が9月に延期になり、兵庫の友人山本カツオ君が、10月に、関西にオープンする海のルアーショップのための写真を一枚頼まれたこともあって、急遽、この釣行になった。
与那国の西端に位置する久部良の町からよく台湾が見えると聞いていたが、僕は15年通って、やっと今回見ることができた。これもラニーニャ現象のおかげであろうか。青い空と水平線の間に、紫がかった尾根が遠くに見える。確か台湾は、3000m級の山々があるのだが、この島から見える台湾の山はほんの100qぐらいしか離れていないのだが、あまり高くは見えない。
国が違えば距離的には近い所でもはるか遠くに見えるのは、僕だけであろうか。ともあれ、絶海の孤島、与那国島が一瞬国境の島に変わり、なんとなく孤島感も薄らいでしまう。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バショウカジキとロングジグ

朝6時頃出航して、レギュラーサイズのイソマグロが何尾か釣れた。昼休みに一度戻って、また夕方出航した。最西端の島の夕日は遅い。6時ごろにやっと斜光の中に金色の色調が、混じり始める。
320gのロングジグはスルスルとなんのストレスもなさそうに100mの海底に到達した。
「少しずつ、駆け上がりですから」と瑞漁丸の金城船長は地形を説明する。僕はイエローテイルという新しいロッドで一回か二回巻いて一回しゃくるリズムでジグを動かす。

ヘビージグはアングラーのリズムと海のリズムのコンビネーションで動く。つまり、波のリズムを無視した形でジグを動かすと、絡みやすくなる。特に与那国のような大海の孤島は大きなうねりと小さな風波そして潮目が3重に複合されて目というよりは体で波のリズムを感じながらロッドの動きを同調させるといい。
金城さんが新しくつけた2キロワットの高性能魚探をにらんでいる。船が少しずつ流されると、海底地形の上に昼間と、うって変わった魚の群れが映し出された。さらに根に近づくと、大物特有のへの字がいくつか映し出され始めた。
船長は一度潮上に船を戻してから、船首を風上に向けて、風の影響を操船で打ち消しながら潮にもたせて流しはじめた。
底をとって10mぐらい上げた所で、カツカツというイソマグロ特有のアタリが来たので、少し持って行かせてから、強く合わせる。ラインは15mぐらい出されたが、すぐに止まった。20s近いイソマグロである。再び船をポイントに戻してロングジグを落とす。また水深80mの所でカツンと来たので、グイと合わせると、根掛かりみたいに、動かない。僕はラインをリールに巻き込みながら連続して合わせを続けた。すると、急に、かなりのスピードで魚は走りだした。
ポジショニングをして、左手でスプールを下から押さえながら、テンションをかける。新しいダイワの6000HiAのドラッグをちょっとチューニングして使用しているけれど、この大型のスプールは、ハンドドラッグがすこぶるやりやすいのである。
ラインを30m持っていかれた所で、魚はやっと止まった。

すかさず僕は、フットポンピングで魚を浮かせにかかる。大きなイソマグロかなと思っていると、ラインが出ていないにもかかわず、ラインが、海面の方に上昇し始めた。途端、初めに長い角が出たと思うと、100m先の海面が白い泡で盛り上がった。次の瞬間、魚はひらひらと空中に舞って、ジャンプを繰り返す。ラインは、再び凄い勢いでスプールから出されはじめた。バショウカジキである。
僕は素早く糸フケをとって、魚の動きにあわせてロッドを倒し込んだ。カジキは4〜5回ジャンプを繰り返したが、かなりの労働だったらしく、ロッドで制御するのには、そう時間はかからなかった。

もう一度、しっかりとあわせて、口の中に深くトリプルフックを差し込んだ。なぜなら、カジキ類は口が硬くフックが刺さりにくい上、ジャンプを繰り返した後は、フックホールも当然大きくなってしまっていると判断したからである。

それに、いつも僕はヘビージグの時は、スプリットリングをだいたい2個つける。それはジグ側に200LB、フック側に300LBとして、重いジグウェイトと魚の動きの干渉によってバレを少なくするためである。
魚を寄せると、カジキは、船を見ると、驚いて、走ったが、すぐに止まった。僕はフックの刺さっている位置を確かめてから、船首の一番前に立った。つまり魚が右舷から左舷に素早く動いても、ロッドで対応するためである。
一進一退の攻防がさらに5分ほど続いたが、バショウは再び潜ることなく、船の近くに引き寄せられた。
金城船長がショックリーダーを握った時、魚は急に船尾に走り始めて、スクリューの下にもぐり込んだ。もしラインがスクリューに触れればもちろん切れてしまうに違いない。
僕はとっさに7.4ftのロッドを片手で目一杯海の中に差し込んでから、船をゆっくりとバックしてもらった。
再び魚を寄せると、今度は元気がないので船長と2人で一気にランディングした。3m近い70LBの大型のバショウカジキである。

 

ついている時は、+α
「あんな深い所にバショウカジキがいるんですねえ!?」と平山さん。
「それよりバーチカルジギングで釣れることが驚きだね!」と僕。
「トリプルフックはすぐにはずれるけれど、ねえ、鈴木さんのことだから、なんかしかけしてるでしょう!?」と船長はニコリと笑った。
 近くにいたルアー船にのっていたアングラーも手を振ってくれている。僕はジグにかかってくれたバショウカジキに感謝しながら、久部漁港へ帰った。
 ツキというものは継続するものらしく、2〜3日後に今度はトローリングのスタンディングファイトでブルーマーリンを釣り上げた。

 

活躍したタックル

ロッド YELLOWTAIL7.4ft、BIGGAMEスタンディングマーリン5.2ft

ルアー CRAZY LONG JIG 320g・220g

リール ダイワ6000HiA

ライン モーリス10×10・5号、サンヨーナイロン130Lbショックリーダー