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サムネイル63回

誕生日に釣れた巨大バショウカジキ

フェリデューからムラクへ

 

夜のモルジブへ

11月21日はぼくの誕生日である。毎年この日の前後一週間をモルジブですごすわけで、今年もマーレ空港に10名の仲間と共に降り立った。

日本からコロンボ経由であれ、シンガポール経由であれ、この海に浮かぶ空港に着くのは夜中の12時近くなる。

新月の闇の中をホテルが用意してくれた送迎用のオープンデッキのスピードボートは、全て見えている昼間の時のように全快で飛ばし出した。時折、白いしぶきが鈍い航海灯の中に飛び散る。ぼくは、暗闇の中で夜空を見上げた。天には満天の星空が広がり、星々が絨毯のように敷き詰められている。時々、スーッと光が流れて消える。

1〜2分に1回くらいの割合で流星が見えるわけで、90年ぶりのしし座大流星群と関係があるのかなとふと思ったけれど、すぐにそんなことは忘れてしまった。

他の人は寝込んでいたけれど、ボーッと口を開けて上を向いている自分は、誰かが明るい時に見たら、マヌケ面をしたおじさんに違いない。

今回のメンバーは旅行業をやっている友人の東君のはからいで、11月に「鈴木文雄を行くモルジブツアー」を組んでくれた。それは、11月はモルジブで過したいというたってのぼくの希望から出たものであることには違いないが、11月の中旬以降は、この美しい島々が一年中で一番良い季節に入るからである。

常宿にしているオルベリビューリゾートは、敷地も広く、日本人スタッフも多い。

その上、新しく総支配人になられた西村さんは、釣りに理解があって色々と便宜を図ってくれるので、中々居心地が良いのである。

オルベリーは南マーレの南端に位置し、南北マーレはもちろんのこと、アリアトールやフェリドゥーといったGTの宝庫の環礁にも、天気が良ければ一時間くらいで到達するのである。

翌朝メンバー10名でミーティングして、2艇のクルーザーに分かれた。一艇は関西にあるルアーショップの店長シーマンのカツオ君にまかせて、早々に出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

遠藤が釣ったグッドサイズのGT

マル秘の環礁ムラクへ

なんと、ムラクアトールまで2時間半かけて行こうというぼくの提案に、船長のハッサンは快く同意してくれたのである。

当然、釣っている時間は34時間しかなくなるけれど、ムラクの南部は2年前に3日かけてドーニーで行ったが、1日しか釣りが出来なかった。そこで、今回は日本にいる時から、くさいポイントやデータを集めていたわけで、ワクワクしながら一目散にムラクにボートを向けたのである。途中、フェリドゥアトールの内海を通ると、例の「GT60連発」でアプローチしたポイントが次々に現れたり、ベイトフィッシュの群れがザワザワしているけれど、ルアーを投げたいという気持ちを抑えてつつ横目で見ながら、一路ムラクへ向かったのである。

ムラクアトールはモルジブの中でカツオの漁獲量が一番高いこともあり、職業漁師しか住んでいない。つまり、リゾートとは無縁なのである。

船長のハッサンはムラクまで、遥々ボートを飛ばしたのは初めてらしいけれども、彼はムラクより更に南方のラアム出身である。

ポイントは長い緩やかな曲線を描いたドロップオフが続き、見渡す限り島が見えない。

チャンネルもなく、リーフに沿って西から東に潮が沸き立つように動いていて、中流域の大河のようなその流れは、静かだけれどかなり強い。

大潮なので、朝、海は引きに入っているけれど、リーフエッジの上は水深が23mある。つまり、アトール内からのはきだしの潮が、いつも相当強いためにリーフの上が流れで削られてしまっているに違いない。ぼくが見る限り、エッジはストレートに一気に50m落ち込んでいて、上部のクリアーな明るい水色と対照的に、エッジから2m離れてしまうと、濃紺に近い外洋の海の色なのである。

 

 

 

GTを釣るためのルール

船に乗っている5名のメンバーは、全員がいっぺんに投げることが出来ないので、いくつかのルールをぼくは作っていた。

@     順番に1人づつ30分休む。つまり、前で2人後で2人がキャスティングする。

A     1人がファイト中は、他のメンバーはルアーを投げてはいけない。

B     ルアーを投げる時は一度、後をチェックする。

C     アングラーの後を通る時は、声をかける。

以上、4点である。

よく、ビデオで1人がファイト中にどんどんと投げてヒットさせるシーンがある。また、他のグループでは、そのことが当たり前のように考えているアングラーが多いが、誰かがヒットするということは確かに投げればヒットする確率は高い。しかし、安全という面からすると、これほど危険なことはないとぼくは考えている。なぜなら、アングラーは誰でもそうであるけれど、釣れる時ほど焦りまくるわけで、他のアングラーが視界に入らず、人間をフッキングしたという事例がよくある。フッキングの場所が、腕や足ならまだ良いけれど、頭に刺さると我々の判断では、例えバーブレスのフックでも抜くことが出来ない。まして、目にでも刺さったら取り返しのつかないことは言うまでも無い。

国内であれば速やかに対処出来るけれど、GTやジグで行く海外となると、病院の施設に行くには1日以上かかることがある。アングラーがファイト中は、他はルアーを投げないというルールは、ぼくは当たり前だと考えている。

ぼくの言う、ダブルヒットやトリプルヒットというのは、誰もヒットしていない時、皆が投げて、それがほぼ同時にヒットすることで、ファイト中に他のアングラーが投げてヒットさせることではない。

 

写真右:3尾、4尾と養殖場のようにエサを争うように釣れてくる状況に、タクマ君も興奮気味。

 

爆釣 爆釣 また爆釣

さて、釣りである。ムラクに着いて、ぼくが5人でやったジャンケンに負けて、始めの30分を休んでいると、小向さん、木原さん、タクマ君、押田君と次々にヒットが続く。それが、どんどんエスカレートして30分経ったところで小向さんとぼくがチェンジした。

一投目、リーフの3mぐらい内側に入れて、エッジの落ち込みの真上で、デッドスローショートパンプする。1秒間に1回くらいの割りで、バコッ、バコッと動かすと、真下から直角にGTがロケットみたいに飛び出して、トングペンに頭突きを食らわした。

ルアーは空中に魚ごと舞い上がって、魚は尾鰭をバタバタさせて、なおも空中でルアーに襲い掛かろうとするけれど、地球の重力には敵わない。そして、始めに魚が海面に落ちて、少し手前にルアーが動きながら落ちた。今度は左右から2尾のGTが現れて、ルアーに突進する。さっきのヤツは中央から背鰭をブルブルと震わせて襲い掛かろうとすると、隣にいたタクマ君が「スゲェ・・・」と叫んだ。

ぼくもなんかドキドキしていたら、前方の下からもう1尾が3尾を差し置いてルアーにバイトし、反転して勢い良くボートの方にルアーを付けたまま突進してきたが、抜駆けをされた3尾は収まりきれず、更に食いついているルアーにバイトを試みる。ぼくは、ただただリールにラインを素早く巻き取って、ロッドにテンションをかけるのが精一杯である。

「ねえ、なんか養殖場みたいだね。」ふと、我に返ったぼくは、タクマ君に言う。

「うそみたいですよね。夢じゃないですよね!?」と好青年は答えた。

ランディングすると、記念にと言ってタクマ君がGTを持ってくれたので小さいけれど、写真を一枚撮った。

その日はこんな調子で、4時間ぶっ続けで釣り続けたわけで、モルジブの凄さに改めて感動した。

 

 

インド洋でも異常気象

海流はトレードウィンド(偏西風)によって、作られる。つまり、インド洋でも同じで、夏は南西モンスーンが吹き荒れて雨季である。10月の末に北東風の乾季の冬型になるだけれど、今年(98年)は11月の中中になっても夏型なのである。

現に、ぼくの入る前日までは大雨と強風のために、外洋には出られなかったらしい。ぼくは、そんな話を後で西村支配人から聞くまでは、いつものようにハレオ君なわけで、11月のモルジブは晴れて当たり前だと信じていたのである。

翌朝、メンバーを変えてフェリドューアトールに行くことにした。フェリドューアトールは北が上で、底が南で靴のトップが東を向いている長靴そっくりのアトールである。

やはり、オルベリーから1時間ぐらい走ると、南の靴底に到達した。そこは、以前ぼくが10数発連発続けざまにGTを釣り上げた実績を持っているポイントである。

風が少し前日よりも強くなってきたけれど、環礁の風裏のせいかベタ凪であるが、逆風のためにメンバーのルアーの飛距離がのびない。仕方なく、エッジ50mぐらい接近して、キャストを始めるとポツリポツリと釣れ始めるが、なかなかサイズが上がらない。

新月の大潮だから、午前中は結構いいはずであるけれど世界的な異常気象は、ここモルジブの水温を23度高くしてしまったらしい。魚はどいつもそうであるけれど、人間が思っている以上に海水温に敏感である。つまり、水温が魚の体温を決めるわけで、人間も体温が23度上がったら、ほとんど食欲がなくなってしまうのと同じだ。

 

 

 

 

 

 

誕生日に釣れた巨大なバショウカジキ

ともあれ、ルアーは投げなければ釣れないのであるから、粘って投げるしかない。フロントでは皆、長時間のキャスティングが続いている。

11時頃になって、リアデッキにいたぼくは、いたずらしてジグを流してみた。すると、1分も経たないうちにラインが飛び出したので、すぐにロッドで強くあわせると、ラインが海面を切り裂くように走り出し、その内、リールから激しいクリック音が鳴り始めた。そして次の瞬間、ラインの方向とは違う所からカジキが飛び出し、飛んだり跳ねたり繰り返して、なおも止まらない。

ステラから、ほとんどラインが消えたところで、やっと魚は止まってくれたので、素早く巻き取ったが、再び暴力的なスピードでラインが出て行く。今度はリールの底が見えて、これでおしまいかと思った所で、再び魚は止まった。ぼくは、もうありったけのスピードと力でラインを100m巻いて、さらに魚を落ち着かせて一安心したところで、どうせキャスティングのついでのトローリングでかけたのだから、「みんなでやろうよ。」と提案すると、「見てますよ。」と誰かが言ったけれど、みんなの目はやりたいと言っていた様にぼくには思えた。

「カツオちゃん、すごいぞ!」とロッドを渡すと、カツオ君はマジでファイトを始めてくれたが、「スゲエ、スゲエ」を繰り返して、34分待っていたが、次の木原さんに代わった。「もの凄い引きですね!思い切り巻きます!」と、力ずくでグイグイとリールを巻こうとするけど、なかなか難しい。

次に青森の小向さんへ。「あ、巻き始めたァー」と、様になったポッピングでラインをリールに収めだす。

「東北の粘りは、やはりただものじゃないね。」と、カツオ君

栗本さんに代わって、一進一退が続いて最後に再びぼくにロッドが返ってきた。リールの下を手で抑えて、一気に勝負をかけて魚を浮かせた。

「デケェー!!」と、カツオ君。

「カジキだー。初めて見る!」と、小向さん。

「尾っぽにねぇ、ギャフを打ってランディングして。」と、ぼく。

リヤーゲートからデッキに入れて写真をパチリ。その間、海水をどんどんかけて、すぐに海に戻す。口にリリースギャフを打ち、ゆっくりボートを走らせ始めると、始め横になっていたカジキが体をクネクネ動かしだした。1分後エラが動き、ツノがピンピンと振り出し始めたので、口からリリースギャフを外してやるとボートの下に潜り込むように海中にスーッと消えた。

4m近くあるよね!船からはみ出なかった?」と、木原さん。

120lbぐらいだね。ぼくが今まで見たバショウカジキの中で一番でかかったみたい。」とぼく。

頭の中で、こんな巨大なバショウカジキなら1人でファイトすれば良かったかな・・・?と、ちらりと思ったけれど、GTのキャスティングでモルジブに来ている以上、ジグとはいえトローリングで掛けた魚は外道であるからして、みんなで楽しむことの方が良かったことは言うまでも無いと思った。

そして、夜になって何本かのシャンパンとワインをみんなで用意してくれた。ぼくは、結構思い切り飲んでいたら、釣り好きの日本人の新婚旅行の夫妻からシャンパンボトルが届いて、更に盛り上がった。

その後、西村支配人も加わって、バーに移り夜は更けていった。また、1年後も、このGTの楽園が存続していることを祈りつつ、倒れて寝てしまい、ぼくの誕生日は終わった。

活躍したタックル

ロッド GT GAME TYELLOW TAL74

YELLOW TAIL7MONSTER CC59

リール シマノステラ10000H・ダイワExi

 ルアー 魚雷110S-POP120COBLA110

LONGPEN100 LONGJIG220 320

ライン モーリス アヴァニ60Lb バリバス170lb