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サムネイル67回

粟国島釣紀

海から見て一番美しい南の島

 

白い断崖の島
大きなうねりの中に白い陽炎の壁が浮き上がって見えた。蜃気楼は近づくにつれて、揺らぎながら実像を結び、切り立った断崖の島が現れた。
日本の南の島の中で、「海から見て一番美しい島は」と聞かれたら、僕は迷わず「アグニ」と答える。
粟国島、この美しい響きをもつ呼び名は土地がやせている上に、水源がほとんどなく、栗しかとれないことに由来する。また、国はもともと城壁に囲まれた都市を表している。つまり、栗しかとれない断崖の島、粟国島となったのだろう。
この島は、数十万年前までは、霧島火山帯に属する火山島であった。それが波、風雨で浸食され地穀変動で現在の形となった。

白色疑灰岩の90mの断崖は、南西端筆ン崎からゆるやかに傾斜しながら海におちている。

 

粟国の塩
粟国は、かつて琉球王朝に直接海産物を届けていた。なかでも塩は重要な献上物であり、今でも立体塩田塔使って、太陽熱や風で海水を凝縮させ、さらに平釜で煮詰めて結晶化させる方法で、天然海塩が特産物である。「粟国の塩」は「専売公社の塩」がナトリウム塩が99.4%に対し、85%しか入っておらず、15%はカルシウム、マグネシウム、カリウムといったミネラル分となっている。

世界一おいしい塩と自称するだけあって、この塩はあまく感じられるのである。島の中央に集落があって、人口は1000人たらずであるけれど、新石器が出土したりして、その歴史は案外古い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖縄のGT
沖縄の春から初夏にかけて北の季節風が吹き荒れて、その合間を縫うように2〜3日穏やかな日が続き、さらに南風が吹き出すと、初夏になる。
前日の伊平屋島、田名岬で、グッドサイズのGTを釣り上げている僕は、この季節には珍しい、釣行2日続けての好天に気を良くしている。沖縄本島本部、渡久地港から出港して、途中パヤオでニュータイプのキャスティングジグのテストを終え、粟国に近づいている。
今回、魚の写真でおなじみの大久保幸三君の誘いで沖縄本島の中部から北部にかけてのルアーの可能性を調べている。僕が慶良間や南部の初期のGTポイント開発を手掛けたのは、GTのキャッチアンドリリースの考え方が本島に定着していなかったからである。が、釣れだしてみると、とんでもなく釣れるという誇大広告がはびこった。1尾の魚がインターネットや雑誌広告で10尾になり報道されていく。都会からそれを信じたアングラーが押し寄せ、一時的にフィーバーが起こる。ある日GTが影をひそめ、誇大広告だけが残る。

回復への時間は延々と長く続くわけで、一時的なフィーバーが、ポイントに与えるダメージは計り知れない。すると「慶良間はもうダメだ」という声が都会で起こり、アングラーは減少する。
「ロッドをふっても、魚は増えない」という当たり前の理屈が分からないチャーター業者はさらに誇大広告をうつ。
GTは成長の遅い魚であるし、根魚に近い。30kgの魚になるのに15〜20年かかると考えている。その魚が、つり堀のように釣れるわけがない。釣れるとしたら、産卵などの事情により、その地域の魚が一カ所に集まっているだけで、魚の絶対数が多いわけではない。そこを叩ききってしまえば、その地域は終わる。GTが釣れて当たり前という考え方は、漁業大国日本においては当てはまらない。釣れなくて当たり前というアプローチがあってこそ、GTを含めた素晴らしい魚たちを、より価値のあるものに変えるのではあるまいかと僕は思う。
「少し黙ってろ!」と言ってしまえばよいのだろうが、沖縄を含めた日本の釣りに誇大広告はつきものである。
 それは、石垣でも宮古でも、西表でも与那国でも同じである。魚は有限であろうし、回復能力の範囲内でチャーター業者が付き合っていく方法はただ一つである。それは「沈黙すること」であると石垣で10数年GTのガイドをやった僕は考えている。

 

筆ン崎の隠れ根
1度、島の東側に回り込んでから、ゆっくりと傾斜のある断崖にそってキャスティングに入った。白い璧に向かってルアーを投げると、逆光にラインが光って伸びる。ルアーはゆっくり断崖の影の部分に落ちていく。光の空より、影の断崖の白さの方が日に眩しい。
しばらく投げていると、筆ン崎がそそり立つように覆いかぶさる。潮は岬付近で東西に流れているようで、波の形が緩んでいる。多分東の風にそって動いているのに違いない。南西の沖に小さな瀬の連なりが見える。潮が風と同調しているせいか、まわりの小波をさらにべっとりしたうねりだけが、ゆるやかに、空の雲を映しだしている。僕は長いペンシルポッパーをサファイアブルーに輝く、帯状の根に投げた。黒みがかった根の淵から、何尾かのGTが海面すれすれに背びれで水を切りながらまるでイルカのように、飛び出してくるのが見えた。
ペンシルを小刻みにショートパンプし、失速させると、斜め横から3〜4尾が交互に交差しながら描がじゃれるように襲いかかるが、ロッドにはバタバタと振動にも似たアタリがあるけれど、GT特有の、ドカンという衝撃は来ない。僕は少しペンシルを早めてから1尾を誘い出した。バイトの瞬間、タイミングをみてルアーを口の中に押し込むように止めてから、鋭くあわせた。潜らせないようにうまく根をかわして、ラインをを出さず、1分ほどして取り込んだ。10kgの小さなGTである。その後続けざまに3尾が釣れたけれど、サイズは上がらない。

 

 

 

 

 

 

 

イソマグロの連発
沖を見ると結構いい潮の流れが見える。潮は川のように速く動いているけれど、よく見ると、水の湧きだしや、沈み込みが見える。海底地形は潮の流れの形状によってある程度把握できるので、船長と相談して船を回す。順永丸の喜屋武船長は、粟国は初めてであったが、ガイド役をかって出てくれたホテルベルビューの大嶺さんと一生懸命魚探を覗き込んでいる。流れを横切ったり、沿って動かしたりして、地形を読む。潮上100mの所に強い反応が出たので、ロングジグを落とした。中層で一度小さくあたってすぐにばれた。320gのジグをもう一度勢い良くおとして底をとる。リズミカルにあまり早くならないように動かしてみると、ガツンと来て、少し走って止まった。ゆっくりとポンピングして魚を取り込む。小型のイソマグロである。
もう一度、同じ所に船を回した。底を取ってジグをさらにゆっくり2回巻いて1回しゃくると、下から20mの所で、ガツガツとしたアタリが来た。ジグを止めて少し送り込んで、鋭く合わせた。今度はラインが飛び出ていった。イソマグロの良型がヒットしたのだろう。
ステラ16000Hのノーマルドラッグは細かいドラッグテンションをきめることが出来るけれど、6000HiAもそうであるが、フェルトワッシャードラッグの欠点は、5kg以上のテンションを継続してかけると、特にイソマグロやイエローフイン、GT等の大型魚がかかり、ラインが激しく出てゆくと、ドラッグテンションが2〜30%ゆるんでしまうである。これは、フェルトワッシャー自体が、ドラッグ圧と熱とで薄く変形するので、起きるらしい。これを防ぐには同サイズのテフロンワッシャーを1〜2杖入れる方法で、僕は解決している。フィッシンググロープを濡らして手のひらで下からスプールを押さえ込んだが、一度走りだしたイソマグロは、おいそれと止まってくれない。かかった魚に、固体差はあるけれど、今かかっている魚はかなり元気がいい。ノーマルドラッグのステラから、100mほどラインが飛び出たところでようやく止まった。
止まった魚をドラッグに頼らず、ハンドドラッグで押さえ込んでポンピングに入る。次の走りまでに巻けるだけ巻き取らなければならない。幸い80m一気に巻き取った所で魚はもう一度走ったが、最初の元気はない。魚の頭を僕の方に向けてゆっくりと時間をかけて引き寄せた。 25kgのイソマグロである。
その後大久保君と僕とで同サイズのイソマグロを3尾釣ることができた。
「いい魚ですよね。ロングジグでどんどん釣れて、新しいポイントも見つかったし、なんか嬉しいですね」と僕。
「粟国って絵になりますよね」と大久保君。
「ここ数年の中で一番の大漁!」と船長。
「ホテルのポートが直ったら、また鈴木さん来て下さい。今度はもっと早朝に出港して……」と大領さん。

 

高校野球
余談だが、春は高校野球のシーズンである。沖縄尚学が、今年は優勝した。

本州をさして内地と呼ぶ地方にとって、つまり北海道と沖縄にとっては、これはもう悲願に等しい。

北海道生まれで小学校まで札幌で過ごした僕にとっては北海道代表の北海高が30数年前に決勝戦で敗れたことを思い出す。石垣島に移り住んで 12年目を迎えて、今もその思いは消えない。

沖縄県にとってこの優勝は、いろいろな意味でかなり重いものに違いない。ねがわくば、次は僕の生まれ故郷である北海道に春、夏どちらでも良いから、優勝旗が津軽海峡を渡ってくれたらと思う。沖縄県と沖縄出身の皆さん、おめでとうございます。次は北海道だ!!

 

 

活躍したタックル

ロッド BIG GAME88  GT-GAME-T YELLOW TAIL

ルアー LONG PEN100 / 110  CRAZY LONG JIG 320g / 220g  BIGEYEJIG

リール ステラ16000H

ライン モーリス アヴァニ60Lb バリバス170Lb

 

旅の問い合わせ 

東西ビジネス交流センター旅行事業部 03-3780-1234