77回
西表島川釣行予紀
プロローグ それでも、今年の沖縄は何十年に一度の寒い冬となって昨年の12月など那覇で雪が降ったらしい。 |
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煙雨の西表島へ |
イリオモテヤマネコ 「たまにね。道を横断しているんですよ。特に夜は注意しないと」「ぼくはまだ見たことがないけど、けっこう見られるんですか?」「見ようと思って見られるものではないですからね。島に住んでても年に一回見られれば良い方ですよ」 今泉吉典さんたちが頭骨標本から2年後にようやく結論を出した。 ちなみにマヤは沖縄方言で猫、イルルスはギリシャ語で同じく猫、イリオモテンシスはラテン語で″西表の″という意味らしい。 最近、見直しがなされ、台湾や対馬にいるヤマネコと同類のベンガル系ヤマネコの一種とされつつあるが、西表島の大陸島としての地球時間での歴史、頭骨の後頭榜突起の形状など、多くの疑問を残している。個体数は、100頭前後と言われているけれど、いまだにその数は把握されていない。ただ言えることは、年々、その数を減らしている。それは、西表島といえども森林の伐採と農地の拡大と並行しているらしい。さらに、生ゴミ、飼い猫、野良猫の病気感染等、解決しなければならない問題が多い。 |
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森と道 |
若者とおやじ 「でもねェ、いざ来てみるととっても寂しいからね、続かない。ホームシックといおうか何か理由をつけて、すぐに帰っちゃうのです。仕事に穴があくと、誰かがカバーしなくちゃいけないでしょ。 都会の人は夢とか憧れで来て、寂しくなったり、人間関係でトラブると何のためらいもなく仕事を放り出す。結局、島の人に負担がかかるのです」 「石垣でも同じですよ。そういう人に限って、ちゃんと内地に帰れるように、つてを残してくるのです。ですから、人の迷惑なんか考えない。もっともらしい理由をつけて、その日の内にハイさようならってね。随分いますよね、ただ頑張っている若者も多いことは、忘れてはいけない」 「鈴木さんは、何年いるのですか?」「ぼくは、13年になりましたけど」「帰りたいと思ったことあります?」 「自分は帰れなくして島に来たんです。帰路を断って島に来ると頑張る以外に道はないですからねェ。まして石垣は西表みたいに自然が豊かではない。しまったと思いましたけど時すでに遅しで…。でもねェ、石垣島って釣りには良い所なんです。石西礁湖があって、島の周りはサンゴ礁が世界有数に発達している。八重山の文化の凄さは住んでみて驚かされた。ぼくの住んでいる白保なんかは昔の集落ですから、のんびりしていていい町ですよ」 「最近の若い人は、どうなっているのでしょうね。ドライで小さい考えの人が多いですねェ」 「それは、我々が若い時代に先輩諸氏から同じことを言われてますからね。きっと今の若い人たちも、ぼく達と同じ歳になれば″最近の若いやつらって″と言うんじゃないですか」「ハハハ…」 |
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上原の美しい海岸は今 |
マングローブと干潟 その間、遊歩道を歩いていた人に、会うことはなかった。たぶん煙雨で見えなかったのかもしれない。 |
1週間の川釣りロケ しかし、1984年に初めてこの地を訪れた時のような強烈な感動はなく、エコツーリズムという環境に配慮した観光事業が完成しつつあることを実感しながらも、心の中では少し寂しい思いもあった。当時、この川のルアーフィッシングは、ぼくだけのものであったからで、ぼくの川からぼくらの川になってしまった今、あてがわれたエコツーリズムガイドの聞き役に徹する自分に不甲斐なさを覚えた。 我慢して読んでいただき、ありがとうございました。釣りについて期待していただいた読者諸氏には、お詫び申し上げます。 |
○参考文献 |