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サムネイル78回

サイパン釣紀

日本に1番近い南洋島

 

 

 

 

水色のサンゴ礁と、さびた戦車

朝風は殆ど無いにも関わらず、ユラユラと沖の方が逃げ水のように柔らかくうねっている。

熱帯松、モクマオウの林の間からは淡い水色の珊瑚礁が沖に向かって続いていたが、ぼくは少し沈んだ心でその海を見つめていた。

白く輝く砂浜からほんの50mぐらいのところに赤茶けた鉄の箱から大砲が突き出している。

1920年代、この島は第1次世界大戦の敗戦国、ドイツから日本の統治領となって、多くの日本人がサトウキビやコーヒー、タピオカ栽培農業のため入植した。

しかし、1944年7月に日本軍兵士、民間人合わせて5万人がアメリカ軍に突撃し、あるいは自決し、爆弾で吹き飛ばされて、玉砕する。

グアム、ロタ、テニアン、サイパン。硫黄島とスペイン王妃マリア・アンナの名をとった、この美しいマリアナ諸島は、南洋というバタ臭い言葉とともに、日本にとって暗い歴史を持っているのである。

しかしながら、海の中に今見えているもの日本軍の小さな戦車は、なぜか未だ錆び朽ち果てることなく、屈託の無い南洋の光の中で沈黙し続けているのである。その風景は、ぼくから写真機を向ける気力を奪ってしまい、同行者の陽気さとは裏腹に、言葉にはならない寂しさを覚えながら、うねりたつ海を見つめた。

   

写真右:律儀で親切なガイドの宮内さん。サイパン20年のベテランである。

 

沖のうねりの中へ

ゆっくりとリーフを回り込んでいくと、小さな港が見える。そこには、現地のチャモア人の子供達が、飛び込んで遊んでいた。

10分ほどボートを走らせると、船長の宮内さんが、釣りのOKサインを出した。新しく開発したコークスクリューダウンジグは一気に120mの海底に到達する。

すぐに平山欣一さんのモンスターが大きくしなったが、途中でラインブレークしてしまう。続いて大作君がまた何かをかけた。ジリジリと持ち上がってくると巨大なサメである。また平山さんのロッドが曲がり。

12kg〜13kgのイソマグロが上がった。まあ色々賑やかな釣りである。

東京から3時間、日本から1番近い外国の南海島は、我が石垣島と変わらない所要時間で来られる。そこは道も広く、車も大きく、英語のネオンがチカチカしていて、良いにつけ悪いにつけ、アメリカっぽいのである。

 

写真右:いきなりヒットした大物にラインをきられてしまった大作君。これはカッポレ

 

日本人が忘れられない島へ

2日目は、少し足を延ばした。テニアンとの間は潮が速く、かなり波があったが宮内さんが頑張ってくれて30分ほどで着いた。隆起サンゴにかこまれたその島は、うねりが直接ぶつかっていて、ほとんどサンゴが発達していない。多分、海流が島を覆い被せるように流れているのであろう。

そしてこの島は、広島、長崎に原子爆弾を落としたB29、エノラゲイ、ボックスカーが発達した島でもある。そういう話を釣り雑誌に書いても良いのだろうかと考えながら、どうしてもここのことを外すわけにはいかず、さらりと書いてみた。

回り込んで島の西側に入ることが出来た。リーフエッジから20m離れると100mあるドロップオフである。宮内さんが魚探を見ながら、潮と水深を上手く計算してボートを止めた。一投目にいきなり大作君のロッドがしなったが、途中でラインブレイク、得体の知れない魚にメンバー全員が結構フィーバーしてしまった。クロカッポレ。イソマグロなどが次々と釣れた。

ここまで来ると、海洋島独特の純粋な群青の海である。隆起サンゴが 風状に連なる断崖に大きなうねりが真っ白な花火のように砕けて飛ぶ。

「あの白い泡の中にGTがいるんじゃないかい?」

「投げてみようか?」欣一さんが目を細める。

「またね、今度着た時のために楽しみにとっておこうよ」とぼく。

「もう一度サイパンサイドの流れ出しのポイントに入って頑張ってみましょうよ!」と律儀な宮内さんは言う。しばらくサイパン島の方に走ってポイントに入った。

  

写真左:120mの海底から浮上したのは12〜13kgのイソマグロ。クレイジーロングジグで

 

平和なこと

午後の斜陽が、日焼けした顔を更に熱くしようとした時、パラパラを雨粒が落ちて蒸発する。夕方のサザンスコールは、天から帯状の涼しさとなって、我々をかすめた後、遠のいて行く。

「通り雨ですよ。でもねェ、あの虹は美しいでしょう!」と沖に半円を描いて消えていく7色を宮内さんは指差した。すると、今度はぼくのロッドにアタリがきたのだが、すぐに外れて軽くなった。ぼくはそのままジグを巻き取って、他のメンバーのつ釣りを黙って見ていた。

オレンジの光の中に大きな翼が旋回してから、サイパンの島の方にジャンボジェット機がゆっくりと着陸して行った。

「平和だね」と風の中で誰かが囁いたような気がしたが、波に消され、風に消され、光に消された。

「来た!来た!来た!・・・」と欣一さんが叫んだ。

東京からすぐついてしまうサイパンは週末のジグフィッシングには最適である。ホテルも綺麗で食事も美味しく、ガイドも親切で、旅の疲れを癒してくれた。朝6時に宮内さんが、時間通りに迎えに来てくれたし、1日中、気を抜くことは無かった。しかし、日中は、あまりにも暑いので、3日目は朝と晩3時間づつ釣りをした。御世話になった宮内さんに誌面を借りて末尾ながら御礼申し上げたい。

 

   

 

 

 

タックル

ロッド

FISHERMAN MONSTER56

FISHERMAN  MONSTER56 L

リール

EX6000i

ステラ10000F

ライン

モーリス 1010 5

アヴァニ50Lb

ルアー

FISHERMAN クレージーロングジグ320g・220g・170

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Flats 044-949-1500

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