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サムネイル89回

 

ニューカレドニア釣紀

南緯22度の楽園  天国に一番近い島

 

神様の地球儀

地球儀をくるくる回すと、色々な島が現れる。行ったことのない島、何度か行ったことのある島などが、次々と現れては消える。まるで、自分が天に住む人々になった様な気がしてくる。 

小説家、森村桂の作品「天国に一番近い島」を借りると、

“海をね、丸木舟をこいで、ずぅっとずぅっと行くんだ。するとね、地球の、もう先っぽのところに、まっ白な、

サンゴで出来た、小さな島が一つあるんだよ。それは、神様のいる天国からいちばん近い島なんだ。”と、なる。

ここに出てくる島はニューカレドニアにある小さなサンゴ礁の島、ウベアがモデルである。多分、森村氏が考えたのは、“神様が地球をぐるりと回した時に、一番初めに目にした島”なのだろうと思う。

 

写真左: 美しいヌメアの町                         写真右: ナンヨウスギの生えるグランドテール島のリーフにキャスト

 

思いつきのGT釣り旅

 2月の終わりごろ、FISHERMAN6号の整備が一区切り付くと、ぼくは、また釣ぐせがウズウズとしてきた。神様とは違い、GT釣師の場合は頭の中でGTと南海島をぐるぐると回して、シーズンとお金と時間で地球儀を止める。そうすると今回はニューカレドニアと言う事になった。

カレンダーをめくり、3月のスケジュールを見ると、3日から11日まで時間が取れた。海図を集め、釣りの情報を旅行社に聞く。更に、しこたまニューカレドニアが載っている本を買い込み、インターネットでも検索する。

これがまた、楽しい。

ニューカレドニアは、カルスト地形を思わせる勾配した山々が続き、麓には天を突く南洋杉の大木が見えるらしい。

“この島をヨーロッパ人で初めて見たクック船長には、この風景が郷里のスコットランドに見えたらしく、ローマ時代にスコットランドはカレドニアと呼ばれていて、その懐かしさからニューカレドニアと付けた。”こんな話は、まぁー、誰かがこじつけた、まことしやかな作り話だろうけど風景を見ている限り、かなり説得力がある。しかし、クックがきた時代、山々は豊かな亜熱帯雨林に覆われていたに違いなく、その後ヨーロッパ人によって森は伐採されたのである。だから、この話は作り話と思われる。

南洋杉は、島では男の象徴で昔は、こぞって植えたらしい。ちなみに女性の象徴は、ヤシの木である。ニューカレドニアで一番大きい島が、グランドテール島で、面積は、ほぼ四国と同じである。

この細長い島は、周りを1600kmに及ぶ大珊瑚礁がバリアーのごとく覆い、標高1600mの山を中心に、1000m級の山々が連なるフンボルトとバニエと言う2つの山脈が走っている。この山脈のおかげで、島の西側は季節風の南東風からも北東風からも守られる形となり、年間を通して雨が少なく、天候は安定している。

成田から、8時間のナイトフライトで、朝の7時にグランドテール島マジェンタ空港に着く。すぐ釣りに出ても良いのだが、みんなでヌメアの町をふらつくことにした。水族館では、深海に住むオウムガイの仲間であるノーチラスを見てから、茶をすすり、海岸でビールを飲んで過ごした。

  

写真左: ロングペン100にヒットしたツチホゼリ   写真中央: ホウセキハタ ロングジグ320   写真右: オオグチハマダイ ロングジグ320

 

快適な36ftカタマランGTボート

明朝6時、ヌメア港を出航して、島のインリーフを東南に廻り込んで行く。インリーフといっても、島からアウトリーフまで15マイル(40km)位あって広い。そこに、無数の小さな珊瑚暗岩礁が点在している。フランス海軍によって作られた、精密な海図を基にセットされたフランス製GPSは、明らかに日本のそれより遥かに見やすい。

液晶海図画面にボートの航跡は、次々と誤差数cmで正確にトレースされて行く。

今回チャーターした36ftのカタマラン船は快適に走り続けた。

ぼくは、キャビンの奥にあるベッドに横になると、すぐに寝息をたてていたらしい。午前8時ポイントに着く。

「島とアウトリーフの中間位にある、大きなパス(水道)の入口です。ここは、何の変哲もありませんが、大きいGTが出ることで有名です。」とニューカレドニア釣行の窓口になってくれた、アルファインターナショナルの松井君が言う。

天気が曇りのせいか、青い海もどんよりとして見える。山本君が一投目を投げた。ぼくも続けて投げたけれど、何の反応もない。

「おかしいな?」と松井君は、ぼくが2,3投したところで首をかしげた。

「小潮で潮止まりじゃないのかなァ?潮が効くのを待ったほうが良さそうかな??」とぼくが言うと、直に同意してくれた。

甘いフランス菓子パンを朝食替わりに食べてから、また、朝寝をする。

 

写真左: 今回お世話になったバルタザール号             写真右: カツオくんの釣ったGT・ロングペン100

 

突然のGTとケロッグ21?

2時間後、潮が効き始めてきていた。

ボートをゆっくりと動かしながら、エッジのシャローを丁寧に攻めて行くと、いきなり、山本君のロングペン100が消し飛んだ。

「スゲェー!」

ラインはビューと風を切って出て行くが、すぐに止まった。彼はフットポンピングを使って、あっさりと2分で22kgのGTを浮かせた。 30分もしない内に、今度は僕のルアーにグッドサイズがバイトした。

「小さいGTは、ほとんど釣れないですよ。どうしてなんですかね?いつも突然、何の前触れもなくドカン!とですからね。」と松井くんが言う。

午後に入って、また潮が止まりそうなので、僕は新しいデザインのルアーを試すことにした。

「何ですか、そのルアー?」と、釣りビジョンのディレクター遠藤君が覗き込む。

「これねェ、まだ試作で世の中にこれ1本しかないルアーなんです。だから、釣れない時に、ちょっと試してみようと思って。」

「それいいですよ。ぜひ使ってみて下さい。」

「でもねェ、GTに切られたら、どうしよう?」

「大丈夫ですよ、鈴木さん。」と山本君が口を挟んだ。

「特徴は何ですか?このルアーの。」

「深く大きな口を持っているから、ビッグバブルと、でかい破裂音が特徴で、それにポンピングすると、鋭角にボディが海中に突っ込むように設計したんだ。石垣のテストの時はね、ものすごく良かったけれど、ニューカレドニアでは、どうかな?」

一投目、投げてからショートパンピングでテストすると、ニュールアーは無事に帰ってきた。二投目、何の変哲もないシャローに投げて、ビックパンピングを試みる。1回、2回、体がいちいち横を向く。その横を向いたところで、突き上げるようなバイトがニュールアーを襲った。

「うわー!出ちゃったGT!!」山本君が叫ぶ。

「うそ!」とカメラを回していた遠藤君。

「ほんとかよ!切られたらどうしよう・・」と普段とは違う弱気なぼく。

沈めないように、GTを誘導してランディング。

「何ていう名前のルアーなんですか?」と遠藤君がカメラ越しに言う。

「ケロッグ21世紀とでも。」

「ケロッグ21で決まりですね!」と山本君。

 

写真右: ケロッグ21で釣ったGT

 

ニューカレドニアのGT

ニューカレドニアでのGTのバイトは、その後も続き、なかなか良い思いをした。釣り旅行会社トレードウィンズの横田君に言わせれば「でかいGTしかいない。」という言葉通りのはずだったが、撮影を終わってからも、小さいGTも続け様に釣れて、ぼくは安心した。ニューカレドニアのGTは、この豊かな内海の中で確かに数多く生息していた。

「誰も釣りに行かないから。GTは多いですよ。」と松井君。

「何処がそんなに面白いの?マヒマヒだって、ツナだって、よく引いておもしろいし、ジャンプだってしてくれるのに。」とフランス人の船長のエリックが不思議がる。

「GT、そうだなァー。東洋人的な美しさでは理解できるけれど、西洋的な考えでは解らないかもしれないね。」

「なんて訳せばいいですかね?困っちゃったなァー・・・」と松井くんが戸惑った顔をする。

「じゃあ訳さないで、“どっちもおもしろいね”と言っておいた方が無難だね。」

もうしばらくは、日本人のためのGTFでいけそうだけど、このおもしろさにアジアの人達や西洋人たちが目覚めるのは、時間の問題に違いないだろう。

 

写真左: 小さなGTが釣れて、ホッとした。   

 

スカパー“鈴木文雄の FISHERMANワールド”

スカイパーフェクトTV、釣りビジョン遠藤ディレクターの企画で“鈴木文雄の FISHERMANワールド”なる番組がスタートする。年に何回か、フットワークの良い撮影スタッフが同行してくれ、ぼくと、ぼくの仲間達の釣行記を撮影するという、企てである。第一回は、天国に一番近い島、ニューカレドニアを選んだ。

出発前日、3月2日に釣りの先輩である西山徹さんが、お亡くなりになった。本人の希望もあり、静かに見送るためにも、僕は何もしなかった。たった一度だけ、この島で天を仰いだ。青空は消えて、薄いレースのような雲がやわらかく見えた。その向こうに、西山さんが天国に向かっているのかと思うと、撮影中にもかかわらず言葉が詰まった。

「NHKに、やっと釣り人という職業を認められたよ。」と、何年か前にNHK日本釣り紀行の撮影で、石垣島を訪れていた師が言った言葉を思い出す。小説家や、俳優、他のメジャーな職業人の言葉を借りなければ、語れなかった

“釣り”を、釣り師が初めてNHKの釣り番組に、主役として登場したのである。その番組以降、NHKで多くの釣り師が起用された。

「全部釣った魚を殺す釣り人もいるのだから、鈴木さんみたいに、釣ったら全部逃がす釣り人が居ても良いじゃないですか。」という言葉も、蘇った。

「ご冥福をお祈りします。西山さん、色々ありがとうございました。」

夕方のヌメア港

 

旅の問い合わせ

トレードウインズ・03-3272-1764

タックルの問い合わせ

シーマン0792-45-3412

FISHERMAN 09808-3-5318

釣りビジョン

03-5765-7552

 

活躍したタックル

ロッド・・ MONSTER CC 70

     GIANT 82T  YELLOWTAIL BG74

ルアー・・K-ROG21 LONG PEN100 / 110

     S-POP 150BH

PEライン・MaxPower 80Lb(6号)

ショックリーダー・ SUPER STEALTH170Lb

 

8kg近いスマガツオがロングペン110にヒット