91回
オーストラリア釣行紀前編
デントリーリバーのバラムンディー
グレートバリアリーフの小さな島と、こじ付け 「オーストラリア、良いですよ!」と“FISHERMANオーナークラブ”のエガワ君が熱っぽく語ると、聞く度に少しづつ行きたい気持ちが湧いてきた。 「鈴木さんはオーストラリア嫌いなんですか?」 「南海島を台頭にしていると、オーストラリアは大陸だから、どうも後回しになって・・」と言い訳をした。 「ケアンズの沖にフランクランド島という立派な島がありますよ。人が住んでいるのかはわかりませんが、その島からの方がグレートバリアリーフガイド、キムアンダーソンが行くGTポイントに近いですよ。ですから、こじ付けですけど南海島小紀行フランクランド島釣行なんてね。どうですか?」と来た。そこで、こじつけてオーストラリアに行くことにした。 オーストラリア北東部ケアンズには、10年ぶりに行ったことになる。 |
写真左: マングローブパーチことゴマフエダイ 写真右: ジャングルパーチことオオグチユゴイ
ケアンズへ 正月が過ぎた頃、1月5日に成田空港を発つとナイトフライトで6時間、朝の5時にはケアンズ空港に着いた。 釣り旅行社トレードウィンズの現地駐在員、青柳君が迎えに来てくれていた。 「鈴木さん、10年ぶりですよね。」 「覚えていた?」 「覚えてましたよ!」と彼はニコリと笑った。 10年前9月のリザード島に、GJFAの岡田順三会長とカジキ釣りの勉強に行って以来ということになる。ほとんどは、クルーザーでカジキを釣るためのレクチャーだったが、一日休みをもらいアルミボート(10PS付)で、島のGTを何匹か釣った。そのお話は、まだ書いていないが、書く事がなくなった時に取ってある。それ以来ということになろう。 「川ガイドのテリーホフマンが、宿泊のホテルに迎えにきます。」 |
写真左: テリーホフマンが釣ったターポン
川ガイドのテリー 午前8時、朝ご飯を食べ終わった頃、テリーは、アルミのジョンボートを敷きながら、ホテルに現れた。 「デインツリー川に行こうと思うけど、どうだ?1時間以上かかるから、車の中で眠っていると直ぐに着く・・」と一通り説明すると、我々2名は4枚ドアーのサファリに乗った。 「後ろもシートベルト付けてください。これ“オージーレギュレーション”です。」とテリーは明るい。 海岸線を80km/hぐらいで飛ばしていると、グレートバリアリーフの海が見えてきた。 「波、結構ありますね。風強いのかな?」と、明日から始まるGTFを心配して、エガワ君が窓から覗き込んだ。 天気は晴れているけれど風が強いみたいで、打ち寄せる波は海岸線を白く濁らせている。 グレートバリアリーフは、大陸東海岸に沿って南北に2千kmと世界一長い珊瑚礁だけれど、陸からアウトリーフまで100km近くあり、内海と言っても外洋とあまり変わりがない。かえって、波長の短い波によって頻繁に現れる浜は、侵食が激しい。ピッタリ1時間で我々はデインツリー川に着いた。 川岸に一艇ボートを降ろすスロープがあって、ただそれだけであるが、周りには何台かのボートを乗せたトレーラーが、既に順番を待っている。テリーの番がくると、彼は手際良く3分程で20フィートのジョンボートを川に浮かせた。 |
写真左: 川岸のスロープ 写真右: ストラクチャーだらけの支流でエガワくんがバラを釣った
初めてのバラ 「流れ込みのストラクチャーにバラ(バラムンディー)は付いているのだ。」と小さな小川が本流に入っている所で、ボートを止めた。マッシュルームアンカーをドボンと入れてから、ルアーをキャストする。 「スズキ、バラは初めてかい?バラはルアーが止まったところを吸い込むんだ。こんな風に。」と手でクラゲが泳ぐような格好を見せてから、 「だから、2〜3回リールを巻いたらルアーをストップさせて、ポージングさせる。1秒位してから、また動かして止める。その内“カツン!”ときたら、強く合わせたらダメなんだ。そしたら、バラは勝手に動いてフッキングする。」と続けた。 ぼくは、言われる通りに動かしていると 「スズキ、グッドだ!日本のアングラーは、言っても聞かない人が多いんだ。多分、ブラックバスが大きく合わせるから、それに慣れているんだろうね。動かし方も良い。後は、バラをヒットさせるだけだ。あの倒れ木の下辺りがポイントだ。少し遠くに投げてから、ゆっくりアプローチしてみると良い。ちょっと待って、ルアーはこれだ。」 彼が選んでくれたのは、バースディ社の11cmのフローティングマグナムである。 「この海っぽい色はどう?」とぼくは、わざとにブルーのインクカラーのミノーをつまんだ。 「ここは川だから、海の色はノーグッドだ。赤金、黒金、茶金、ダークグリーンホロなんかが基本だよ。」彼は本当に丁寧に教えてくれる。ここは解らない事は、全部聞いた方が無難だと思った。 彼の選んだミノーを付けて、フリッピングで倒れ木のストラクチャーの少し奥にルアーを押し込んだ。手首でちょっと動かしてから、水深がありそうなのでロッドを水の中に入れる。2回ゆっくり巻いて止めて、もう一度2回巻いた所で、“ガクン“とミノーが何かにぶつかったような感触を覚えた。次の瞬間、ドラックが少し引きずられたので、また手首を使って軽く合わせてからロッドを立てた。バラは水面近くまで来ると、暴れて飛び上がった。 テリーはニコニコしながら、ネットで魚をすくう。 「グッドだ。ナイスジョブだ!」と満足気だ。 「鈴木さん、やりましたね!もしかして初バラですか?」 「そうなんだ!ずいぶんと遠回りしたけれど、嬉しいね。」 ぼくは、自分が研究しているニューギニアバスのためにミンダナオ島、カリマッタン島、マレー半島と釣り歩いたけれど、どれも空振りで終わっている。川は好きなのであるけれど、海ほどのツキはないらしいと思っていた。 |
デインツリー川本流で釣れたバラ
スペシャルステージの支流 ボートはさらに川を進む。 「トップやってみて。」とテリーは、またマッシュルームアンカーを落とす。これが川底をグリグリと擦ってくれるので、ボートは草の生えている水際に沿って、ゆっくりと流れてくれる。小さなトップを草の際に投げてヒコヒコと動かす。続け様に、ジャングルパーチュ(オオグチユゴイ)、ターポンが釣れた。魚は小さいけれど、これがナカナカおもしろい。 午後に入ると、風が川に沿って吹きだした。川の所々に、ワニが“ひなたぼっこ”しているのが見えた。 「あれ、デカイですよ。4mはあるかなァー・・」と、エガワ君が指をさす。 ワニはフラットに広がる草むらの中で、長く横になって身動き一つしない。 「あーやって、体温を上げているんだろうね。」 「でも、気持ち良さそうですよ。あんなのに“ガブリッ”とやられたら、たまらないですね。誰も泳いでいない訳だ。」 とエガワ君は話を続けた。 「今日はスペシャルステージがあるぞ。」とテリーがからかって、ボートを急に支流に入れた。支流と言っても幅は10m位、 流れは相当速い。オーバーハングした木々が、まるで緑のトンネルの様だ。 「空、あんまり見えませんねェー。」とエガワ君。 「寝そべっていた方が無難だね。」と、ぼくはボートフロントの方に、うつ伏せに寝た。 テリーは、お構い無しにボートを走らせる。所々に、川幅イッパイの木が倒れている。流れは木の上に覆い被さって、15cm位の段を付けている。テリーはジョンボートを、そのまま突っ込んだ。“ガンッ!”と舟底が当たったけれど、アルミ製フラットボトムのボートは、なんなく乗り越えた。 テリーは一度、タイミング良くエンジンを上げてから、直ぐに降ろして、何食わぬ顔でボートを進めた。 「気合い入ってますよ。今日のテリーは!」とエガワ君。 「どこに行くんだろうね?」とぼくは言いながら流れに目をやった。 しばらくすると、テリーは幅2m位の茶色い水が流れ込んでいるポイントに止めた。 ロープでボートを木に括り着けて、エンジンを切った。 「スペシャルポイントだ!デカイのが居るぞ。でも、難しい。」と、小川に目を遣る。 流れ込みを遮るように、水深1mの所に2本の木が沈んでいる。 ボートの左右は、オーバーハングした木が低く覆い被さっていた。 「水深は、4m以上あるけれど、ストラクチャーの下にバラは潜んでいるから、ミノーを思いっきり沈めないと駄目なんだ。」 と、テリー。 一投目にエガワ君が、少し小さいバラを、ラインを出さずに釣った。 「まだ、デカイのが沈んでいる。」とテリーがつぶやく。 |
写真左: スペシャルステージ
クロコダイルダンディーと80cmオーバー 今度は、ぼくの番が回ってきた。ぼくは昨年、開発したOCEAN・LRにディープダイバーを付けて小流れの奥にフィリッピングで入れる。端のストラクチャーをスレスレでかわして、ロッドをリールの所まで水に突っ込んでから、1回巻いて止めた。 もう1度巻いて止めたら“ガクン!”という当たりがきた。小さく合わせると、魚は一気に、ストラクチャーの奥に逃げ込んだ。 ラインが2m程出された所で、手でリールを押さえ、プレッシャーをかけた。それでも、少しラインは出された。ロッドは水中に突っ込んだままである。そのままリールを巻かないでボートに沿って、ぼくは体ごと移動して魚を引きずり出す。引きずり出したところで魚を浮かせると、上手く倒れ木の上を通過して、広い本流の方に飛び出した。 「グッドサイズ!」とテリーが喜ぶ。 「80cmオーバーですよ。スズキさん!すごいですよ。」 魚が花火のように飛んだり跳ねたりするのに合わせて、いちいちロッドで魚をねじ伏せた。2分後、魚は疲れたらしい。 ゆっくりと泳いで、こっちに向かって来た。 「テリー!ネットに入るかい?」とエガワ君が聞く。 「いいサイズだ。必ずすくってやる。」とテリーも真剣だ。 ぼくは、魚の口にトリプルフックの一本しか掛かっていないことに気付いた。慎重なやりとりの末、ボート際に寄ってテリーが網を入れようとした瞬間、無情にも魚の口からミノーがポロリとはずれた。 魚はゆっくりと沈んでいく。我々3名は、何秒か言葉を失った。 「惜しかったね・・悔しい。」と、初めにぼくが口を開いた。 「すごいバラですね。ケアンズの近くにも居るんだ!あんなデカイ奴。しかも、川の中にね。」 「テリー、ありがとう。」と、テリーの方をぼくは向いた。 彼が、本当に悔しい顔をしているのに気が付いた。考えてみれば、もしかしたら彼の方がよっぽど悔しいかもしれない・・ と、ふと思った。 「まァー初めて来て、でかいバラ釣ったらいけないってことだよ。これでまた、ここに来る理由がたったね!」とぼくが言う。 「今回はOKだ。」とクロコダイルダンディーのテリーは満足気な顔に戻った。 |
旅の問い合わせ トレードウィンズ03-3272-1764 タックルの問い合わせ FISHERMAN 09808-3-5318 |
活躍したタックル ロッド・・FISHERMAN OCEAN LR ルアー・・シュガーミノー9・11・13cm ライン・・モーリス社 THE GAME12lb |