92回
オーストラリア釣紀行 後編
グレートバリアリーフのGT
グレートバリアリーフ 海は少し時化ているようだ。風は時折、アウトリガーのラインを切って、“ヒュー”という口笛を吹く。 ケアンズから1時間ぐらい走っただろうか。大陸はかすかに西の靄の中に浮いていた。 波は小さな波長の風波だけで。まだ、ボートがグレートバリアリーフの内海にいることを示している。 「グレートバリアリーフのエッジまでは、4時間ぐらいかかるみたいですよ。で、インリーフといっても広すぎて。 ほとんど外洋と変わらないですよ。」と同行のエガワ君が言う。 グレートバリアリーフはオーストラリア大陸の東岸にあって。北はアラフラ海とサンゴ海を分けるパプアニューギニアのトレス海峡から、南は南緯25度に浮かぶ砂の島・ブレーザー島まで約2000kmと世界一のサンゴ礁群である。 豊かな内海には有人無人を含めて700の島が浮かび、沢山の生物が色彩豊かに楽園を作り上げた。 そのサンゴから出来ている島々の幾つかにはリゾートホテルがあって、一年を通して観光客でにぎわっているらしい。 「ポイントはそろそろですよ。キムが今、ベイトを探すためにツナタワーの上に上がりました。」とエガワ君が言う。 |
写真左: 龍満くんとダブルヒット 写真右: S-POP170BH
キム・アンダーソン GTガイドであるキム・アンダーソンは彼の愛船ニュームーン号と共に日本でも有名なキャプテンである。ぼくが彼の名前を知ったのも随分前で、本誌に“鱒族に会いに行く”を連載している皆川哲さんのレポートからだった。また、オーストラリアの釣旅に、以前から力を入れている旅行社の“トレードウィンズ”の横田君からも、しばしば聞かされていた。 ハーバーで紹介されたキムは、思ったより若くハンサムであった。バラムンディからビルフィッシュまで全てのガイドをこなす彼は、30代後半の脂が乗り切ったキャプテンである。 キムがツナタワーの上から船首の左側を指す。 「クジ、エーサ、キャスト!」と叫んだ。 「船首に向かって9時の方向にルアーを投げてください。エーサーはエサの意味でベイトフィッシュです。」と、 エガワ君が補足してくれる。 ぼくが7ftのショートロッドYellowTailBG70でフルキャストすると、どうも彼の期待した飛距離より遥かにルアーが飛んだらしい。 「スーパーキャスト スーパー!アゲイン!」と、再びツナタワーの上からキムの声が聞こえた。 「すごく喜んでいるみたいですよ。あんなに飛んだルアー見たことがないのかもしれませんね!それにしても、 よく飛びますね。」と、エガワ君が付け加える。 写真左: ダイナソーカラーはオージーの間で人気! 写真右: ケロッグ好きのエガワ君
ぼくが再びキャストするとリーフエッジに浮いていたベイトボールを直劇したらしくバシャッと直径10mぐらいの円が海面から浮き上がった。 「GOOD!GOOD!」 また、声が聞こえた。 「フィッシュ。GT、GT」をキムが続けた。瞬間、ルアーが炸裂した。 “ビューン”と、ラインは10mぐらい出て止まった。 「エガワさん、キャスト!」 ファイト中のぼくがキャビン側に避けると、エガワ君が同じベイトボールのキャストする。 「GOOD!GT!ヒット!」 今度はエガワ君のルアーが消し飛んだ。 GTのダブルヒットの後、キムは2尾のGTの動きに合わせてボートを巧みに操船した。 ぼくからランディングしてすぐにリリースすると、エガワ君のGTも浮いた。 「このボートは1人がファイト中でも、キャストさせますけど良いのでしょうか?」と、エガワ君が首をひねった。 「ボートはね、キャプテンが全て決めるんだ。だから、何があってもキャプテンの責任になるけれど、彼ぐらい良い腕のキャプテンならOKかもしれないし、この辺は意外とフラットだから、GTが釣りやすいね。」と、ぼくは答えた。 キムは続けてベイトボールを探してくれる。今度は船首の右を指して、 「クジハン、エーサー!」と、くる。 「3時半なんですけど、誰かにボート横の左右を“9時”って教わったみたいで・・・気にしないで投げて下さい。」再び、エガワ君が気を使う。 ぼくは、左投げでも右投げでもOKなので、今度は右で投げた。 ルアーはロングペン100、アゲンストの風に強いルアーは逆風を切って飛んで行く。 「GOOD!スーパーキャスト!OK!」と、キムは大いに喜んでくれる。 キャプテンは陽気にアングラーを“誉めて乗せて躍らせる”こうあるべきだと、ぼくはふと思った。ここは彼の意を汲んで乗りに乗ってキャストを繰り返せば良い。 |
写真左:人気のオレンジクマノミカラーのS-POP170BH 写真右:龍満くんのグッドサイズGT S-POP
PEラインの誤解 「ビュン!ビュン!飛んでますね。」 「PEラインの誤解も解いておかないとね。PEは、トラブルが多いという話がオーストラリアでは定説になっているらしいから・・・」 PEラインはナイロンと同じシステムを組むと、実際トラブルが多い。それに、どうしても高価なラインなのでスプール一杯に巻きすぎるし、さらにナイロンラインのつもりで普通に巻くと柔らかくスプールに入る。 こうなると最悪である。こうなると最悪で5回に1回はトラブル。この際だから、PEラインでGTF(GTフィッシング)をする時に、トラブらないぼくの解決法を書いておこう。 @PEラインは硬く強く巻く。指で触って“ボヨボヨ”していたり、少しでも柔らかかったりしたら失格。 A巻き過ぎない。ちょうど良いより少し大めぐらいから始めて、1日キャストしたら5m〜10m前後切って新しいシステムを作る。この方法で、だいたい5〜6回は新しいシステムを組め、常に最高の強度が得られる。 Bショックリーダーの長さは、キャスト時にショックリーダーの終わりに指が掛かる程度が良い。 長過ぎるとショックリーダーもトラブルの原因となる。 Cトリプルラインを作る。PEメインラインからビミニツイストを作り、締めるラインを応用えい、トリプル(3本)ライン編み込みで3本縒(よ)ると、柔らかいPEをナイロンショックリーダーの間の硬さになり、キャスト時に絡まない。 D硬いショックリーダーはトラブルの原因になるので、なるべく柔らかいリーダーを使う。ぼくはバリバス170LbかFISHERMANスーパーステルス170〜190Lb。 Eスイング後、ラインの出て行く角度に合わせてロッドを平行にする。 F弾道スピードが一定し、ラインふけの少ないリアーヘビーのルアーを使う。 以上の方法は、ぼくが考えている実戦的メソードであるから一般論ではない。もし、他の方法でトラブらないアングラーがいたら、変更する必要はない。 |
写真左: 龍満くんのグッドサイズGT K-ROGスマート 写真右: 明るく親切なエガワくん
良いキャプテンの条件 潮が止まったところで、昼食を食べるためにサンゴ礁の入江に入り、キムはツナタワーから降りてきた。 「潮が止まった時にキャストしたらダメなんだ。ベイトは次に潮が動き出す方に1度、沈んで移動する。 その時に、ルアーを投げるとベイトは驚いて散ってしまう。」と説明してくれた。 ぼくも、その通りだと考えているのでニコニコしていると、 「キャスティングもファイトもOKだ。PEも、もちろんOKだ。」と、続けた。 夕方までキムは気を抜かず、ベイトボールを探してくれた。GTも2ケタ釣れて、ぼくも十二分に満足した。 「スズキさんは、オーストラリアにはあまり来なかったみたいですけど。」と、エガワ君が言う。 「グレートバリアリーフに島がいっぱいあるとわかった以上、これからもGT釣りに来ると思うよ。 キムもバラのテリーもいるしね!」 釣りに行って、良いガイドや良いキャプテンに会えることはGTを釣り上げることよりも、ぼくには嬉しい。 良いキャプテンに共通していつことが1つあるとしたら、“常に海を謙虚に見ている”ことだと、ぼくは思っている。 グレートバリアリーフに代表されるようにサンゴ礁とそれを取り巻く浅い海は、太陽光と潮の恵みを受け、海に住む動植物が活発な循環生態系を営んでいる。 GTはその中にあって、サメに次ぐ生態系頂点の魚である。彼らは日常的にベイトフィッシュを食べ、やがて死んでゆく。そして、死骸はプランクトンや蟹、海老などの小動物に食べられ、それをベイトフィッシュが食べ、そしてGT・・・・とつながる。 これが循環生態系と呼ばれている自然界の“輪廻”である。 |
信頼できるキャプテン キム・アンダーソン
写真左: ニュームーン号 写真右: 世界的に有名なイラストレーターのグレッグスミスさんも同船していた。
活躍したタックル ロッド MONSTER CC 70 YELLOW TAIL BG70 ルアー S−POP 170 / 150 ライン MaxPower6号(80Lb) ショックリーダー SUPER STEALTH 170Lb、 バリバス170Lb |
写真右: エガワ君とダブルヒット
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