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サムネイル96回

ビスマルク海の島々B

ラバウル海域のジギング

 

 

タリリ島とキハダ

ニューブリテン本島最北ラバウルのカバカタリゾートから、島沿いに西40マイル行ったところにタリリ島がある。

この島は、本島北西端の岬から1マイル沖にあり、岩の上に森が覆い被さっている。多分もともと本島と繋がっていたに違いない。更にその沖は直に、急激に落ち込んでいるアウトリーフになっていた。

島の近くのインリーフは多くのチャンネルがあり、水深も200m以上と深く潮が、かなり速い。

つまり、リーフからほんの50m離れただけで500m巻の特製スプールから大概のPEラインが出されてしまう。これだけ切り立っているリーフを、ぼくは知らない。

「着きませんよ!300m近く出ていますが・・・」とエガワ君が、こっちを見た。

「魚探は180mってことになっていますよ。」と市ノ川君が、すっかりやせ細ってしまったスプールを見ながら答えた。

「取り敢えず、巻いてみようよ。」と、ぼくが言うと2人はそれぞれのリズムでジギングを始めた。

ボートは何のジグフォローも無く、ただエンジンを止めて流しているのだけれど、不思議とラインは真っ直ぐに落ちて行く。

「120mのところで、何か当たりましたよ。」とエガワ君。

ロッドは少し曲がっているし、竿先はブルブルと小刻みに震えている。

「大きいの?」

「いや、小さいかな?カツオかな・・それにしては、少し重い・・」

ラインは時たま2〜3m出されて止まる。

「まあ、イソマグロじゃなくて、キハダじゃない?」

「だったら、嬉しいね。」

その内、ベタ凪の水面下に弓のように突き出した背ビレと尾ビレが見えて来た。

「キハダだね。10kgはありそうだね!」

「キハダは、ゆっくりと上がって来たけれど、ランディングの直前に驚いて再び潜ったが、5〜6mも行くとあきらめて水面に浮いてきた。

 

ラインが出ない

ボートをまた、同じ所に廻してもらってから、180m落として100mの所までシャクる。

だいたい2回巻いて1回シャクリを50セット繰り返すと、そうなることになる。

ちょうど20回程シャクったところで、ぼくに当たりが来た。“ガッガッ”と喰らいついたので、勢い良く合わせると“ブルブル”と体を震わせている。

再び鋭く合わせを連発すると、かなり効いたみたいで、おとなしくなった。魚を浮かせるスピードを一定にして、ラインを全く出さずにファイトすることを心掛ける。

「ライン出ないけど、ロッド曲がっていますよ!」市ノ川君が、隣で言う。

MONSTERCC70は、キレイな三日月を描いている訳だけど、ポンピングの度にラインは一定のスピードで巻き取れた。

「大きいですか?」と今度は、エガワ君が聞く。

「ラインは出ないけど、まぁまぁかなァー?」

「でも、いい曲がりしていますよ!」と続けた。

3分後、GOODサイズのキハダマグロは、一度もラインを引きずり出すこと無く浮いてしまった。

「でも、不思議ですねェ。引かないですか?」

「カンパチでもGTでも、何回かやって見せたことあるけどね。」

「ぼくの時は、あの大きさで随分と引いたのに・・・」とエガワ君が思い出して言う。

  

 

本命のイソマグロ出現!

キハダは、その後も釣れて本命のイソマグロは現れない。リーフとリーフの間がチャンネルになっていて、不正確なこのボートの魚探が95mを指した。

「ここ、いそうな所だからやってみよう!」とスキッパーのデュランが言う。

1投目70mの所でジグが止まった。

今度は、魚探の水深より実際の方が浅いのかなと思った瞬間、ロッドが“グンッ”としなった。ラインは一気に20mぐらい出されて、なおも出て行く。強く合わせて魚を止めに入ると、動きが少しだけ鈍って、その分ロッドが更に曲がって行く。

「ライン出ていますよ!」と、エガワ君が笑う。

「出る時はね、ラインは出るの!!」と言って、強く抑えると魚は止まったように見えた。“ここから、また80lbのPEラインを引き出させる魚は居まい”と思ってドラッグを10kgオーバーにする。

が、ラインはもう1度加速して行く。

「大きいみたいだね!」と、やっとぼくが本気になってきた途端、ジグが魚から外れるのを感じた。

「抜けちゃった!!」

「エェー、外れたんですか?」

「そォ〜!!」

上がって来たジグは、ボロボロに噛み付かれていたけれど、フックはバーブレスになっていた。ぼくは、間違ってGT用の5/0トリプルをロングジグに付けてしまったことに気付いた。“後の祭り”とは、こういうことを言うのだ。

「まァー、ジグもバーブレスの時代が来るかも知れないネ。」というと、釣友2人はニコリと笑った。

  

エガワくん釣ったハマダイ 

 

黄昏は静かに近づいた

夕方近く、ボートはタリリ島の西を廻ってニューブリテン本島の入り江に入った。黄昏は静かに近づき、

波はそれでもゆっくりと押寄せてくる。

「アンカーが効いても、風と波が直角だと揺れるんですね。」とエガワ君が言う。

太陽は、午後6時を待たずに呆気なく水平線へ沈むと、なおさら夕焼けはその色調を増して行く。

オレンジ色に焼けた暗紫色の雲が、止まった風の中で柔らかく広がっていた。

ぼくはTシャツを脱ぎ、アップデッキでニューブリテン本島の方に目をやると、かすかに風が動き出した。風は敏感に海陸と温度の隙間を抜けて行く。森から吐き出される風は、常緑樹の乾いた硬い葉の下に潜む湿った冷風を運び出し、裸の体から熱気と興奮とアドレナリンを奪い去って行く。緑は海とも川ともつかない汽水域を占領し、まるで海面から枝が生えて天を突くように広がっていた。

「家なんか見えませんね。1軒も」と、隣でエガワ君が当たり前に無い家を探して言う。

 

イルカの狩

ぼくは、最近覚えたストレッチ体操をギコチなく始めると、ロープワークをしていたクルーが“クスリ”と笑った。

水面が少しざわめきたつと、隣にいたエガワ君がロッドを持って後部デッキにさっさと行ってしまった。すると、船の下から水面を割って1mもあろうダツが飛び跳ねて逃げ出す。

その後を静かな沈黙の盛り上がりが、柔らかい引き波を立てて追いかけて行くが、ダツに近づくスピードが異常に速い。瞬間、ダツは黄金色の海に頭と尾びれをV字形に飛び出されて“バリ!”鈍く低い音と共に水中に消えた。後には円い波紋がゆっくりと広がってゆく。近づく闇の中、三角の背びれと丸い背中が遠くの方でチラリと見えた。

  

ジャングルと天の川

ぼくは起き上がり、水面に目をやると暗紫の広がりに小さな光が、キラメキ出した。光の点は更に増えたが、再び風が吹くと点滅し掻き消されてゆく。闇が周りを呑み込んだ時、ぼくは森を見た。

森は闇の中に溶け込んでいた。ぼくは、ストレッチを止めて恐る恐る目を上げると、天に連なる川が広がっていた。川は頭上を越えて、更に反対側の水平線に落ちている。立ち上がり、振り返ると北斗七星が海に浮いていた。まるで天の巨人が星のヒシャクでビスマルク海の水をくみ上げているようだ。

持ち上げる先は北極星に違いない。

わし座、ヘビ使い座、蠍座が真上に見える。

流星が視界の隅で流れたが、願い事をする暇など与えてくれなかった。

船長のジョンが後にアンカーを打ったので、「もう揺れないよ」と告げに来た。ボートの揺れは止まった。

ぼくは、フロントデッキに寝そべって天を見た。天は星で溢れていたけれど、輝きも大きさも均一ではない。ただ、無数の点が集合し、川のように曲がっている。目を瞑ると、昼の残光が紫と黄のにじんだ点になって瞼に広がった。

裸の上半身から、すっかり汗は消えたけれど、森の精霊達の湿り気が乗り移り、冷たく星々の光を反射している。

「ウ!ウワ!ウポ!ウ!」耳奥で訳の解らない呻き声が聞こえ、何かを叩く音と火が見えた。

その時、体を揺すられ、目を開けるとエガワ君が立っていた。

「鈴木さん、夕飯出来たみたいですよ。」

ぼくは、まばたきしてから、ゆっくりと起き上がり、今のは一体何だったんだろうと思ったけれど、澄んだ木を叩くようなその音は、まだ頭の中で鳴っていた。

タリリ島が見える。

 

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