FISHERMAN

オーストラリア ダーウィン郊外

ロッド・・NARROW QUICKER

ルアー・・あひる君10g

湿地帯のサラトガ

2002/4

1時間ほど走ると車はダートに入っていた。見渡す限りの

湿原が広がっている。太陽はそろそろ地平線から顔を

出そうとしているけれど、まだ空の半分は星が光っている。

「あと10分で着きます。」と、ディノ。

ぐっすり眠っていたエガワ君が大きなアクビをした。

川のスロープには既に何艇かのボートが浮かんでいる。

ディノは手際よくボートを降ろすと、自分のポイントに

走り出した。太陽はようやく水平線から顔を出して湿原は

強い射光で目覚めようとしている。5分ぐらい走ったところで

ボートはスピードを落とした。ディノが枯れ葦のポイントを

指さしている。ぼくは、あんまり葦の中に入れるのを

避けて、半分ぐらいの所に“アヒル君”を落とした。

枯れ葦の幹にルアーを絡ませて“グイグイ”と揺すり、

それから小さくポッピングさせる。少し向こうの葦が揺れた。

もう一度小さくポッピング・・・。途端に、垂直にバイト

するように魚が飛び出した。あいにく逆光で、キラキラと

光る水しぶきだけが見えた。“バシャン、ドカン!”と、

まあなんとも派手に騒いでから魚はフックを外して逃げて

しまった。

「何今の??!!」

「何でしょうね・・?!今までに見たことのないバイトですよ・・!」

「垂直と言おうか、体のバネで飛び出したと言おうか・・。

もしかして、サラトガですかね?」と、エガワ君が言う。

ぼくは、もう一度近くにルアーを投げる。同じように誘いを

かけると、また“バシャン、ドカン!”

今度はしっかりフッキングしてみたが、魚はグイグイと葦の

根の方へ逃げ込む。ぼくはお構いなしに、そのまま巻いた。

魚は枯れ葦と水草の中で団子のようになって近くに寄って

来たけれど、ボートの近くでもう一度軽く暴れて魚体を見せた。

網ですくわれて御用となった。

「サラトガですよ!ノーザンバラマンディで日本の熱帯魚屋さん

で売ってますけどね、アジアアロアナに近いですよ!

このゴールデンの色にオレンジの点・・・!何とも言えないです

よね・・!」と、熱帯魚好きのエガワ君がやたらに感激している。

「でね、アロアナをぼくは買っていたことがあって、サラトガも

同じだと思うんですけど、昆虫やクモを食べる時、

体を“くの字”にしてからジャンプする。だから水面から

30〜40cmの所にいるクモを狙って食べちゃうんです・・。」と、

続けた。

南海島小紀行 105回ダーウィン釣行紀より抜粋