FISHERMAN

 

YELLOW TAIL BG78+Longjig220g

与那国島のバショウカジキ

1997/9

船長は一度潮上に船を戻してから、船首を風上に向けて、風の影響を操船で打ち消しながら潮にもたして流しはじめた。 底をとって10mぐらい上げた所で、カツカツというイソマグロ特有のアタリが来たので、少し持って行かせてから、強く合わせる。ラインは15mぐらい出されたが、すぐに止まった。20s近いイソマグロである。再び船をポイントに戻してロングジグを落とす。また水深80mの所でカツンと来たので、グイと合わせると、根掛かりみたいに、動かない。僕はラインをリールに巻き込みながら連続して合わせを続けた。すると、急に、かなりのスピードで魚は走りだした。 ポジショニングをして、左手でスプールを下から押さえながら、テンションをかける。新しいダイワの6000HiAのドラッグをちょっとチューニングして使用しているけれど、この大型のスプールは、ハンドドラッグはすこぶるやりやすいのである。
 ラインを30m持っていかれた所で、魚はやっと止まった。すかさず僕は、フットポンピングで魚を浮かせにかかる。大きなイソマグロかなと思っていると、ラインが出ていないにもかかわず、ラインが、海面の方に上昇し始めた。途端、初めに長い角が出たと思うと、100m先の海面が白い泡で盛り上がった。次の瞬間、魚はひらひらと、空中に舞って、ジャンプを繰り返す。ラインは、再び凄い勢いでスプールから出されはじめた。バショウカジキである。 僕は素早く糸フケをとって、魚の動きにあわせてロッドを倒し込んだ。カジキは4〜5回ジャンプを繰り返したが、かなりの労働だったらしく、ロッドで制御するのには、そう時間はかからなかった。もう一度、しっかりとあわせて、口の中に深くトリプルフックを差し込んだ。なぜなら、カジキ類は口が硬くフックがささりにくい上、ジャンプを繰り返した後は、フックホールも当然大きくなってしまっていると判断したからである。それに、いつも僕はヘビージグの時は、スプリットリングをだいたい2個つける。それはジグ側に200LB、フック側に300LBとして、重いジグウェイトと魚の動きの干渉によってバレを少なくするためである。 魚を寄せると、カジキは、船を見ると、驚いて、走ったが、すぐに止まった。僕はフックのささっている位置を確かめてから、船首の一番前に立った。つまり魚が右舷から左舷に素早く動いても、ロッドで対応するためである。
 一進一退の攻防がさらに5分ほど続いたが、バショウは再び潜ることなく、船の近くに引き寄せられた。
 金城船長がショックリーダーを握った時魚は急に船尾に走り始めて、スクリューの下にもぐり込んだ。もしラインがスクリューに触れればもちろん切れてしまうに違いない。
 僕はとっさに7.4ftのロッドを片手で目一杯海の中に差し込んでから、船をゆっくりとバックしてもらった。
 再び魚を寄せると、今度は元気ないので船長と2人で一気にランディングした。3m近い70LBの大型のバショウカジキである。

 

鈴木文雄の連載“南海島小紀行”より抜粋