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サムネイル102回

暗雲のダールアトール

 

 

 

 

 

写真左:国内線は水上飛行機  

安直にモルジブ

2001年12月に入ると、釣りビジョンの遠藤君と何処かに行こうよということになった。オーストラリアにしようかバリにしようか・・あれこれ迷ったのだが、“柳の下にドジョウが2匹”とばかり、安易にモルジブということになってしまった。と言うのも釣りの旅行会社ワンダーブルーの東完治郎くんに

「少しのんびりとリゾートしてみたら。」と甘い言葉を囁かれたからに違いない。

ぼくは正月が終わると直にスリランカ航空で成田からモルジブの首都マーレに向かった。8時間ちょっとのフライトで着くわけだから時間的には嘘の様である。

「えっ?!もう着いたの?」と不思議な顔をして見せたが、遠藤君は気がつく訳が無い。

この直行便が出来たのも、世界中、テロとの戦争ということになり、スリランカの首都コロンボも危ないということから成田マーレダイレクトとなった。午後9時にはマーレの近くのリゾートに宿泊して、次の日にアリアトールの南側にあるサンアイランドリゾートに入った。まあ本当に“デカイ”リゾートはあるものだと感心するぐらいデカイ。デカ過ぎるので泊り客は皆、自転車に乗ってダイニングやロビー、部屋を行ったり来たりしている。このリゾート“サンアイランド”は日本人スタッフも常時いるけれど釣りについてはあまり興味がないらしい。

  

写真右:広いリゾートの中には野花が一杯                             朝の港

 

2002年1月のモルジブ

1月のモルジブと言えば1度来た事があるけれど今回は非常に寒い。世界中異常気象なのだろうか?

「20℃ぐらいかな?寒いね・・。これじゃあ冬の石垣と同じじゃない・・。」

「もう少し高いと思いますけれど、本当に寒い!冬の小浜島を思い出しますね・・・。」と、涼しげに遠藤君は答えた。ぼくにはこの寒さの影に潜む、もうひとつの不安が過ぎった。

“GTは寒いと釣れない”と心の中でつぶやいてみたけれど、なかなか遠藤君には言いずらい。

悪いことは更に重なった。1日チャーターしていたはずのクルーザーが半日しか使えないのである。

正確には、午後の2時までにリゾートに帰らなければならないのだけれど、これにはさすがのぼくも参ってしまった。ともあれ、次の日の朝から出発するべく入念にタックルを組み立てていく。

釣師はこんな時は、自分の都合の良い方に考えをめぐらせるわけで、ぼくも例外ではない。

“釣れるとイイ”が、いつのまにか心の中で“釣れるに決まっている”に変わってゆく。

タックルの準備が終わると、ウキウキして夕食にビールを飲んでさっさと寝てしまった。

 

長い長い桟橋                                    漁船が近づき・・・・

 

海図の無いボート

次の朝6時、どんよりと雲が垂れ込めている。6時から始まる朝食レストランでトーストをかじり10分で飛び出してボートに向かうが、ここからボートまで400m以上もある桟橋を歩いて行くのだけれど、時折吹く北風と雨に、心はメゲてきてしまった。

「昨日より更に寒い・・・20度を切っているね。」と、呟いてジャケットの襟をたてた。風はやや強い、時たま小雨交じりの風が頬を刺す。

ホテルが用意しているオーストラリア製の30フィートのクルーザーは普段はトローリング用らしい。クルーも、ぼくたちがトローリングに出掛けるものと判断していたらしくファイティングチェアーやアウトリガーといった装備がそのままなのである。東京からの連絡や、昨日の打ち合わせはいたい何だったんだろうと思ったけれど言葉にはならなかった。

これらのトローリンググッズを外させて6時30分、いざ出発ということになった段階で、また問題が起きた。クルーや船長に英語が通じないのである。もちろん日本語もダメなのである。

“海図”と聞くと「そんなものは無い。」ときた。“じゃーエリア地図”これもなさそうだ。あのモルジブならどこにでも売っているMALWAYS地図が、この巨大ホテルにも観光のチャーターボートのこの船にも無いのである。

「どうしましょう・・?」と遠藤君と目と目で話すのだけど、どうしようもない。キャプテンを捕まえて「GT、ベイトボール、わかります?」と英語で尋ねても、ただただ困った顔が返ってくる。

日本人スタッフのお姉さんは今日は休日とのことで、英語の出来るホテルスタッフを呼んで船長に少し理解をしてもらい、やっとのことで7時30分に1時間半遅れで出発した。

 

写真左:サンアイランドが用意してくれた30フィートクルーザー        写真右:筆者ファイト中

 

暗雲のファーフアトールからダールアトール

とりあえずアリアトールの真南にあるファーフアトールに行く事にした。

1時間ほどでファーフアトールのチャンネルに着いた。何とかベイトボールを捜そうとしているとリーフに近づこうとしない。

手で“もっとインサイド”とお願いするけれど、“デインジャラス”ときた。汽水が10mのボートならいざ知らず1mそこそこの汽水しかないボートが危ないわけがない。

それでも無理やり少しルアーを投げたのだけどGTフィッシングはそんなに甘くない。このまま、だらだらGTフィッシングを続けても仕方が無いので、遠藤くんと相談して更に南のダールアトールに行くことにした。

1時間後、ダールアトールの最北端に着いた。このアトールには北側に最近2つのリゾートが出来ているらしい。遠くにリゾートらしい家影が見える。さらにボートを飛ばしに飛ばして午前10時半にリゾートのあるVELAVARU島に着いた。ここには幅が2kmぐらいある広いチャンネルがあって、その中央に頭が5mぐらいの根がある。この根に沿ってベイトボールが浮いているのを見つけた。

寒いとベイトボールはほとんど浮いてこないのだけれど、運良く見つけられたことはラッキーである。

LONGPEN100をフルキャストすると着水と同時にベイトボールが飛び上がる。ルアーを左右にスネークさせて、少しショートパンプを入れると反応があった。ルアーの後ろの海面が盛り上がって等間隔でルアーを追いかけて来た。ぼくは、LONGPENを止めてシェイクすると、“バシャッ!”とバイトしてくれた。大事なGTであるから大切にポンピングして1分ぐらいでランディングした。

15kgぐらいのGTである。モルジブでこんなに苦労してGTを釣ったことがないので、とても嬉しかった。またキャストすると、またバイトがあった。今度はアカマスだ。釣れたところで雨が強くなって来た。晴れ男と異名をとるぼくも今回ばかりは御利益がないらしい。そうしている内に午前11時30分フィッシングストップとなってリゾートに帰った。

 

 写真左:ダールアトールで釣れたGT LONGPEN100         写真右:暗雲立ち込めるダールアトール

 

釣師が夕日を見ながらピザを食べること

午後1時30分リゾートに帰ってからダイニングに行って昼食を取った。

モルジブのリゾートで昼食を食べることは、あまり経験が無い。考えてみればモルジブのGTだって有限なわけで、釣りきってしまえば居なくなることは当たり前のことである。

ましてやこんな寒い日にGTが釣れた事を感謝しなければいけないと思った。

かつて、3年ほど前にファーフアトールに初めて入った時、ぼくはこの1km四方を石垣に移植したいと思ったほどGTはいた。あれから、ほんの3年でGTの楽園は消えていた。

季節的なこともあるだろうけれど、アリやファーフアトールはそこに点在するリゾートホテルチャーターボートのトローリングポイントとなり、毎回のようにGTポイントはトローリングルアーが流されて居ると聞いた。

そしてさらに悪いことに、釣り上がった魚はほとんどがキープされて、リゾートの食卓に上るという。

“釣った魚を食べさせる”が、この辺のリゾートチャーターボートの売りになっている以上、GTの回復は望めない。冬のモルジブにまた、冷たい雨が降り始めた。ぼくは遠藤君と相談して、今回のGTF釣行をあきらめた。

東くんの言うように“たまにはのんびりとリゾートしたら”となった。

 

写真左:お昼にはリゾートに帰った。                写真右:イタリアレストランで暇を潰した。

  

モルジブは何処に

モルジブのGTFは一体どうなってしまうのだろうと思ったけれど良い考えが浮かばない。

モルジブの処女地を求めて、首都マーレから国内線で更に遠くを目指すのも一つの方法かもしれないし、他の国の島を見つけるのも良いのだろうと思うけれど、少し寂しいし少々短絡的、物理的過ぎるような気もする。

リゾートに帰って、我々はピザをほおばりビールを飲んで夕日を見る生活をその後2日ばかりやってから日本に帰った。

後日釣りビジョンの遠藤チーフディレクターから、電話があった。

「以外と良い番組になりましたよ!鈴木さんのモルジブへの考え方や方法論など、釣りはたいしたことが無いのですが、内容のある番組になったみたいです。

鈴木さんも言っていましたが“釣れない時の文章は力がはいる”と同じで今回の番組制作は力が入りましたよ・・・・・!!」と来た。

「釣り師はね、魚が釣れないと仕事にならないの・・・!!」と言いたかったが言葉にならず、

「それは良かったね!上手くまとめられたわけだ。」と言って体裁を繕った。

遠藤くんは「4月3日、楽しみに見てください。」と続けて電話を切った

ぼくは、この原稿を4月2日までに書き終えようと思ったが、今日はすでに4月4日である。

番組を見ると原稿に影響がでるので、まだ見ていない。

巨大なバラクーダも釣れた

 

使用タックル

ロッド・・・GT・GAME・T RS

      GIANT82RST

ルアー・・BigMOUTH150 LONGPEN100

PEライン・・MAXパワー7号

ショックリーダー・・スーパーステルス170lb