トップページへimg

サムネイル41回

ハワイ島釣紀行

釣りの楽園の島から

 

 

 

本当にすっきりとした島である。
きれいな2次曲線を描きながら、海から一気に4000mにのぼりつめる活火山、マウナケア山の頂きにはうっすらと雪が積もっている。
抜けるような青空には雲一つなく、かつて荒れ狂ったであろう溶岩が累々と続く沈黙の不毛の大平地からは、樹木らしいものが視界に入ってこない。
海はというと、大きなうねりを漂わせながら、ゆったりとそこにある。つまり単純明快なすっきりとした島なのである。
朝8時、JALの成田からの直行便は、たった6時間半で、ハワイ島ケアホレ空港に滑り込んだ。
「ほら、沖にクルーザーが何艇か見えるだろう」と同行の平山さんが、海を指して言う。

「なんか、ウキウキしてくるねェ」と僕。

「もうハーバーもここから20分ぐらいだからねェ。スタンバイしてくれているかもね!」と平山さんは釣り心をくすぐりながら、ニコニコと笑った。

 

 

 

ハワイ諸島の中で一番南に位置しているビックアイランド、ハワイ島は大きな活火山の島でもある。
もともと、ハワイの島々は、このハワイ島の下にあるホットスポットから出る溶岩によって作られている。つまり地穀プレートの上を、出来上がった島がゆっくり西北西に移動していることを意味している。
これは1億年の間繰り返されて、ハワイ諸島、さらにミッドウェー、さらに天皇海山列という8000qに及ぶ海底大山脈を創り出したのである。
その偉大なる出発点が、このハワイ島の下にある今の活動しているホットスポットなのである。
今回お世話になる、コーディネーターの伊沢さんが空港に迎えに来てくれた。
彼は20年以上ビルフィッシュを始め、様々な釣りを日本に紹介している、ハワイ島の釣り開発の第一人者と言って良い。彼はコナの海の根という根、潮という潮を熟知しているプロのフィッシングガイドでもある。
僕はすぐに釣りに行きたいが、伊沢さんも、平山さんも「マアマア明日から」と言う。
町の海岸に隣接したカフェに寄って朝食をタップリ食べてから、釣り具屋をひやかしに町をぶらつき、昼過ぎにサウスコハラにあるメガリゾート、ヒルトンワイコロアビレッジに入った。
東洋趣味のこのホテルは、ハワイ島の溶岩流の中にオアシスのように造られている。ワイウルア湾を包み込むような広大な敷地に建物を造り、それを覆いかぶせるように熱帯植物をふんだんに植えている。
ホテルの中の移動は、運河を造り使用しているチークの木製のボートと、電気仕掛けのモノレールである。
正面の海では、ほんの近くまでクジラが回遊してドボンドボンと跳ねていた。また自然の海を利用しつつ、イルカが飼われている。この大脳を持った海の友人に、希望すれば触れるらしい。
もっと驚いたことに、ホテル内の小さな運河にはカスミアジやバラクーダといった大型の、しかも海の汚れにはとても敏感な魚が泳いでいるのである。これは、このホテルがいかにホテルの下水や汚水処理に、お金と見えない気を使っているかを意味している。つまり完全といわないまでも、自然に大いに気配りしているのである。
ここは、一日中このホテルの演出を楽しみながら過ごすことが最良の策ではあるが、釣り師はそうはいかないのは言うまでもない。家族連れで来るなら、こんなに良い所はないと思った。

 

 

明朝8時にコナのハーバーに入り、すぐに出航するとベタ凪であるが、赤道からやってくる大きなうねりは、海を曲線の集まりに変えている。
水深は230mと、船長のスタンレー安田さんが魚探を指さしている。緩い北東の風は山から吹き下ろされてくるものだから、乾いていて気持ちが良い。
10ozのジグはまっすぐに落ちていく。上潮、中潮、下潮の流れが違うのだが、PEラインの細さとこの新しいバスデイ社のストレートダウンジグのおかげで、きっちりと底をとることができた。
1投目からいきなり、平山さんのロッドが大きく曲がった。僕はすぐに自分のジグを回収しようとしたが、僕の方にもアタリがやってきた。小さなヒレナガカンパチがダブルヒットしたのである。
さらにその後、5投連続してアタリがくることになる。ほとんどがヒレナガカンパチであるが、時々カンパチが混じり込んでくる。
底から40mぐらいがヒットゾーンと言って良く、ショートロッドとハイスピードスピニングリールとのコンビネーションはすごい威力を発揮した。
夕方近くになって、平山さんはジグを落としながらロッドを船べりに置いて、ゆっくりとグローブを着けだした。
「手に持っている方がいいよ」と、僕は一応注意した。なぜなら100m以上の水深にジグを落とすとき、よくジグがラインに絡むからである。当然サミングは必要なことである。
「さっきもやっていたんだけど、このジグ全然絡まないんだ」と平山さんはニコニコと動じない。
250mから200mの急激なカケアガリの所にボートが来た時、僕のロッドにかすかな、けれどもずっしりと重いアタリがやってきた。僕は鋭くアワセをし、さらにラインをリールに巻き込んでもう一度強くアワセると、大魚が左右に首を振りながらもがくようにラインを出し始めたが、既にほとんどスプールの中にはラインがないので、きっちりと止めにかかった。
スタンレーにボートフォローを頼み、素早く巻き取りながら、次の魚の反転に備えた。

100m巻いたところで、ラインは再び30m出されたが、初めの勢いはこの魚にはなく、再び巻き続けることが出来た。
15分後魚は浮き、口にギャフを打って船長と二人でデッキに上げた。170p、91.5LBのカハラ(アンバージャック)すなわちカンパチである。
水深200m以上のウルトラディープサイドのルアーフィッシングを考えた時、この未知の分野には多くの大魚が潜んでいるに違いない。我々は海の大物を狙って釣るわけであるが、それはタックルの進歩とファイティング理論に裏付けられた精密なものの考え方から成立する。
「釣り師にとって、大物とは狙って釣る大魚である」と僕は言いたい。

  

 

活躍したタックル

ロッド: MONSTER 5.5ft new

リール: シマノ・ステラ10000H

ライン: モーリス・アヴァニー50Lb200m,30Lb100m

ショックリーダー: モーリス・フロロカーボン30号(プロタイプ)

ルアー: バスデイ300gジグnew

取材協力

ヒルトンワイコロアビレッジ  日本航空