明朝8時にコナのハーバーに入り、すぐに出航するとベタ凪であるが、赤道からやってくる大きなうねりは、海を曲線の集まりに変えている。
水深は230mと、船長のスタンレー安田さんが魚探を指さしている。緩い北東の風は山から吹き下ろされてくるものだから、乾いていて気持ちが良い。
10ozのジグはまっすぐに落ちていく。上潮、中潮、下潮の流れが違うのだが、PEラインの細さとこの新しいバスデイ社のストレートダウンジグのおかげで、きっちりと底をとることができた。
1投目からいきなり、平山さんのロッドが大きく曲がった。僕はすぐに自分のジグを回収しようとしたが、僕の方にもアタリがやってきた。小さなヒレナガカンパチがダブルヒットしたのである。
さらにその後、5投連続してアタリがくることになる。ほとんどがヒレナガカンパチであるが、時々カンパチが混じり込んでくる。
底から40mぐらいがヒットゾーンと言って良く、ショートロッドとハイスピードスピニングリールとのコンビネーションはすごい威力を発揮した。
夕方近くになって、平山さんはジグを落としながらロッドを船べりに置いて、ゆっくりとグローブを着けだした。
「手に持っている方がいいよ」と、僕は一応注意した。なぜなら100m以上の水深にジグを落とすとき、よくジグがラインに絡むからである。当然サミングは必要なことである。
「さっきもやっていたんだけど、このジグ全然絡まないんだ」と平山さんはニコニコと動じない。
250mから200mの急激なカケアガリの所にボートが来た時、僕のロッドにかすかな、けれどもずっしりと重いアタリがやってきた。僕は鋭くアワセをし、さらにラインをリールに巻き込んでもう一度強くアワセると、大魚が左右に首を振りながらもがくようにラインを出し始めたが、既にほとんどスプールの中にはラインがないので、きっちりと止めにかかった。
スタンレーにボートフォローを頼み、素早く巻き取りながら、次の魚の反転に備えた。
100m巻いたところで、ラインは再び30m出されたが、初めの勢いはこの魚にはなく、再び巻き続けることが出来た。
15分後魚は浮き、口にギャフを打って船長と二人でデッキに上げた。170p、91.5LBのカハラ(アンバージャック)すなわちカンパチである。
水深200m以上のウルトラディープサイドのルアーフィッシングを考えた時、この未知の分野には多くの大魚が潜んでいるに違いない。我々は海の大物を狙って釣るわけであるが、それはタックルの進歩とファイティング理論に裏付けられた精密なものの考え方から成立する。
「釣り師にとって、大物とは狙って釣る大魚である」と僕は言いたい。
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