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サムネイル59回

秘密の環礁、ファーフ

 

 

 

 

南アリの真新しいリゾートへ
ハタハタと軽いリズムで、ヘリコプターは着陸の姿勢に入った。

ライトアップされた砂が舞って、闇夜の中に消えていく。
午前2時、我々は眠い目をこすりながら、へリポートからリゾートのある島へと続く、長い長い桟橋を歩きはじめた。高温の大気は、風と光が無い分、べっとりと体にまとわりついて離れない。
「ねえ、あのライトの近くに大きいのがいない?」と田辺哲男プロが指をさす。
桟橋の下は、ところどころに水中ライトがあって、小魚の群れが動めいている。その向こうの光が消えるか消えないかの所に時たま、大きな魚影が横切るのである。
「新月にはねぇ、GTは、産卵が無いから一日中やる気マンマンでねぇ」
「GTは夜遊びしすぎて明るくなって、寝ちゃうんじゃない?」
「明るいのは、ここだけだから、明日行くところのGTは、今頃、ぐっすり寝ているはずよ」
「明日は早朝出て、ドンパチやろうよ」と平山さんが言う。
「じゃ眠れないの、だって、これからシステム組んで…」
とまあ、釣り師は常に眠ることを無視して釣りをするわけで、普通人からみると釣り師ではなく、釣りバカとなるのである。今回訪れたヒルトンリゾート、ランガリアイランドはモルジブ最大の環礁、アリアトールの南西瑞に位置し、昨年の秋オープンしたばかりの新しい施設である。白い敷地にゆったりとコテージが並び、全室オーシャンビューというか、プライベートビーチ付きというかヤシの木陰と白い砂浜、ハイビスカス、ブーゲンビリアといった花々が咲き乱れ、まさに夢の南海島のリゾートホテルといった感じである。
アリはモルジブ最大のアトールで、南北100qぐらいのまゆ形の環礁である。

モルジブが、サンスクリット語“マロドへープ”花輪に由来しているのは、あまりにも有名である。

アリには、真ん中が水没した丸いブルーの環礁が、内海に見渡す限り、拡がっていた。

 

 

秘密の環礁、ファーフヘ
 
翌朝、我々は2艇の高速船で、アリ水道を抜けて、20マイル離れた、ファーフ・アトールに向かった。
 ファーフ・アトールは、ほとんど日本に紹介されていない。この環礁は、東西に20q、南北に35kmのハートを横にしたような形をしている。
 平山さんが乗っている、ブルーウォーターの船長、ウィリアムは、IGFAのセイルフィッシュ部門で、幾つかのワールドレコードを釣らせているが、僕の方は、普段は観光しかやらないクルーなので、トレーニングから始めた。彼らは覚えが早く、多分もともと、リゾート近くに住んでいた漁師に違いないと思った。
 横ハートの北点から、環礁の内海に向ける。ヤシの木が数本生えている島や、白砂だけの島がところどころに点在している。これらの島は、昔中央に井戸を掘って、イスラムの商船に水を売っていた。モルジプの島々は、外国の企業に高額で貸し付けられるけれど、地元では、島の大きさではなく、ヤシの木の数で価値が決まるらしい。
 昼休み、この小さな島の入江に入って、休むことになった。透き通った水色というものは、浅い海、とりわけこのような珊瑚礁の内海のキラキラと屈折率の高い、つまり、それ自体から白色光を放っているような透明なものなのである。僕は、船から泳いで、砂浜近くでプカプカと昼寝を楽しんだ。良く見ると、輝いているのは水だけでなく、砂も珊瑚も小さな魚も全てが色を発しているのである。海が青いということは、本当は当たり前のことのはずである。

 

ダブルヒット、トリプルヒット、ついに全員ヒット
ゆっくりと昼休みをとってから、島の横のチャンネルの外側に行くと、水深10 mぐらいの根が拡がっている。

海は、”ざわざわ”とベイトフィッシュの群れがそこら中に浮いているので、全員で、ロングペンやSポップを投げると、水柱がそこら中にあがるわけで、なんとも凄まじい。同じ所を何回か攻めて、深みから大物を引きずり出す。ちょうど田辺さんと僕が同時にヒットしたので、2人で息を合わせて、一緒にランディングした。常日頃バスプロとして尊敬している名人と並んでGTの写真をパチリ。
しばらくして、今度はエッジに戻り、ゆっくりと船を走らせた。浅いスリットから途中、急角度で落ち込んでいるポイントが見えた。
僕等はポッパーを波の砕けるリーフエッジには投げずに、スリットテラスから、海底地形が見えなくなる、落ち込みあたりを狙って、ショートパンプをすると、クリスタルブルーの底からGTが浮き上がってきて、急回転しながら、ルアーに襲いかかってきた。
それをドーニー型高速艇の屋根の上から偏光グラスで見ると、バッチリと見える。日中、太陽光が海にほぼ直角に差し込んでいるのも幸いするのであろう。20〜30 sのGTが何尾かスクランブルしながら、バイトする訳で、GTアングラーとしては、なんともたまらない。そのうち、富士工業の開発の原川さん、竹口さん、それに我々2人にも同時にヒットしてファイトに入った。つまり投げていた全員がドカンときたわけである。
実はボート側の深みに引き寄せてから、リフティングに入る。田辺さんは、GTが小さかったらしく、既にランディングしてリリースしてしまった。竹口くんのが一番大きかったみたいだけれども、ラインブレーク。
僕と原川さんが「せーの!」で釣り上げて、パチリ。また同じ所でSポップを投げると、またドカン!

すっきりするやら、呆れるやらで出てくる言葉は
「ああ、モルジブ」である。願わくは、この1q四方をそのままわが石垣島に移植できたら、涙が出るほど嬉しいのだが、叶うはずもない。



スーパーセル
タ方になって、にわかにニョキニョキと入道雲が頭上に沸きだしてきた。あたり一面が真っ黒になるけれど、西の方だけが帯状に水平線に沿ってオレンジ色に輝いている。
東から近づいた巨大な積乱雲は、発達しながらアッというまに我々の船を飲み込んだ。みんなキャビンに入り込んで、通り過ぎるのを待つ。
こんな雲を、英語で言えばスーパーセルといって、激しい雨と風と雷を伴う。ドバー、ゴロゴロと、いわゆるバケツをひっくり返したような雨が、横殴りに風と雷を伴ってやってきた。
船長が、風に向けて戦いだすと、キャビンの中は暑苦しくなってしまった。僕は様子を見ながら、アウトデッキで自然のシャワーを楽しんだ。まあセッケンでもあれば、さっぱりするのだけれど、スコールの雨はパチパチと激しさを増すと、熱い体は、益々気持ちが良くなった。

 

 

<使用タックル>

ロッド: GT-GAME-T   BIG GAME7
YELLOW TAILベイト    TIFA G−SLAM S−86

ルアー: S-POP100・110   ロングペン100・80   クレイジースイマー105

ライン: モーリス アヴァニ50Lb    バリバスショックリーダー130+180Lb

フック: スプリットリング カルティバ 5/0、4/0、FISHERMAN200Lb・300Lb

<旅の問い合わせ>  トレードウィンズ03-3272-1764