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サムネイル96回

 

ラーからシャビアニアトールまで往復700km

(マザーボートで行く北モルジブの釣旅)

前編  魅惑のGT天国ラーアトール

 

夜明けの飛魚号

夜明け近く、モルジブの首都マーレの沖に停泊していたフライングフィッシュ号はゆっくりと、北上し始めた。北北西200kmにあるラーアトールを目指した。

僕たちは前夜マーレ国際空港にクアラルンプール経由で降り立って、そのまま今回のマザーボートになるフライングフィッシュ(飛魚号)に入った。

この動くホテルの船内は思ったよりも広く、9つの部屋にはそれぞれ、シャワールーム、トイレがついている。キャビンを兼ねた食堂は、ブリッジにあって、クーラーのない分、風がうまく通るように設計されていて居心地がよい。部屋は、天井部にベンチレーション用の窓がついている。この窓からはモルジブの満天の星が見える。カップルで来たなら、この上もなくロマンチックであるけれど、GTフィッシャーマン10名は全て男であるからして、色気など無く、聞こえるのはいびきばかりである。開き直って考えれば、星を見ながらいびきを聞くのも、GTF(GTルアーフィッシング)以外では考えられないだろう。

 

フライングフィッシュ号の船内

 

晴れ男

7時にはみんな起きてきて朝食を取った。

「天気悪いですね。」と東君が窓に当る波しぶきを見ながら言った。

「でも、結局晴れますよ。ねぇ鈴木さん。」と楽天家のカツオ君。

「僕の晴れ男も、そろそろ終わりかね。」

「いやいや、必ず、明日からドンピカですよ。」

今回というか、ここ何年かは、11月の僕の誕生日に合わせたモルジブ釣行の計画を立ててくれるワンダーブルーの東完治郎君に言わせれば、11月21日前後の天気が特異日のように必ず晴れる。

が、今回は早々に小嵐の影響で、荒れている。

“晴れ男”僕につけられたサイドネームはこの連載が始まって、海外の取材のたびに奇妙に晴れた釣行ばかりとなったことから来ている。雨が降ることは降るのだけれど、釣りを始めるとピタリとやんでしまうのである。

“だから何だ”と言われれば “そうなんだ”と答えるしかないが、カッパなる雨具を海外にはほとんど持っていったためしがないぐらい天気には恵まれる。が、今回の天気は完全に長期的な雨季の延長にあるらしい。

 

写真左:ベタナギのモルジブの島

 

バーアトールを越える

「このまま一気に、バーアトールのソネバフシリゾートを越えてしまおう。8ノットと聞いていたけど10ノットは出ているから午後4時には着く。それから2時間ほど明日からの準備運動を兼ねて釣りができる。」と僕は続けた。

ボートは昼過ぎにはバーアトールの南端に差し掛かってきた。

マザーボートはリゾートのあるソネバフシ島を超えた所で釣りのために随行させていた2艇の小型ドーニーに5名づつに分かれて乗った。夕方までルアーを投げたけれど小型GTが釣れたのみであった。6時30分ラーアトールのはずれ、ダラバン島の港でマザーボートと合流した。

明朝、7時半小型ドーニに乗り、釣りながら、北上しだした。

「やっぱり晴れたじゃないですか。」と東君は上機嫌である。

「すごい威力ですねぇー!雨季が吹き飛んじゃいましたね。」とカツオ君がはやし立てる。

1時間位、GTを釣り上げていると、狭い水路の向こうにラーアトールが見えて来た。

「思ったより、バーとラーは近いですね。渡ってしまいましょう。」と東君。

 20分走っただけで海峡を渡りきった。

 

写真左:移動中

 

いきなり出た!ラーの40kgのGT

すぐにみんなでルアーをキャストすると、一投目に名古屋の木原さんのS-POP200が消飛んだ。

「あんな大きいルアーにヒットするやつがいるんですね」と東君は驚く。

S-POP200はモンスターという別名があって、さらに大きな200もある。200というサイズは200g以上あるということで,決して200gぴったりというわけではない。

“大きいことはいいことだ”と古いコマーシャルソングが有ったけれど,GTに限って言うなら,重さと大きさはGTルアーに課せられた一つの重要な要素になってきた。つまり大きな泡を発生させるヘッド,魚のヘディングで飛ばされない重さというわけだが,重くなればなるほど,投げられるロッドが少なくなってしまう問題が生じる。

「何かすごいですねェ、こんなにでかいルアーでもGTって釣れるんですね。」と冬の札幌からやってきたシーブリーズの店長の紺野君。

 

写真右:ラーアトールに入って1投目、木原さんのS−POP200にヒットGT40kg

新色ブラックヘッドピンクストライプ(文中参照)ロッドはMONSTER・CC6.1

 

我がふるさと

シーブリーズは今秋9月にオープンしたばかりの、新しい海専門のルアーショップである。南の島を釣り歩く、この連載で取り上げるのも、おかしな話だけれど、10月の終わりに、下北半島の大間でマグロを狙った後、その足で,北海道に渡った。

紺野君が札幌駅まで迎えに来てくれて,北23条東三丁目の彼の店に行った。実はその店の隣にある市立北園小学校を僕は卒業した。僕の育った40年前頃のこの辺りは、牧草が茂りサイロが有って、正にのどかな北海道の風景であった。近くのバラトという沼にはイトウが居たし、トンギョ(トゲウオ)が玉網ですくえた。

が、きれいさっぱり消えて町並みが押し寄せ、道沿いに並んでいたポプラもアカシヤもエゾマツもばっさりと切られて、広い道になっていた。“ふるさとは遠くにありて思うもの。”なのだろうか・・・と、ふと思ったけれど、やはり自分の育った町は、町なのであろう。

 

写真左:シーブリーズ店長の紺野くんもみごとなGTを釣り上げた。

 

ラーの夜

話を釣りに戻そう。始め、ラーアトールの東側を北上する予定であったが、リーフがシャローな上に潮流が動いていないので、すぐに無線連絡をして西側に変更させた。途中、いくつかのベイトボールを見つけてキャストを繰り返すと、そのたびにGTが釣れる。サイズもかなりのもので、みんな興奮のうちに1日目の釣りを終えた。

マザーボートを僕の提案で港には入らず、沖に停泊してもらった。見事な夕日が沈み、雲が次々とオレンジ、紫、グレーと変わってゆく。東の空に、きらきらと星が現れてくる。シャワーをあびてから、デッキに出ると、岩田さんがフライを振っている。

「ミッドウェーで、30kgぐらいのGTをフライで掛けたんですがね。」と穏やかに話す。

「真アジが入れ食いですよ!!」と水谷君が小型のミノーで釣りまくる。

「じゃ、ビッグアイジグ落としてみようか。」と初鹿野君。すぐにロッドが曲がり、

「いい引きですよ、これ。」と笑顔がこぼれる。

「背がけにして、泳がせてみようよ」と僕。

生き活アジをハリにつけてGT仕掛けで、海に投げ込むと、すぐにジィーッと持っていって、プツリ!!

「あ、切れちゃった。」

「バラクーダですよ!」と誰かが笑う。

昼間は絶対に誰も、ビールは飲まないけれど、日が暮れて夕食前には盛大な酒盛りが始まる。

「この一杯が美味いです。」カツオ君が一気にビールを飲む。

GTロッドを小物ロッドに替えても、釣り師は釣り師で、どんどんと休む暇もなく釣り上げた。

 

 

 

 

釣り師に秘密は守れない。

次の朝7:30、また、それぞれのドーニに乗って、GTを釣りまくる。

「こんなに釣れていいんですかね。」と、初鹿野君。

「釣れるうちに釣りなさいとも言うね。」とぼく。

「凄いですよ、今三匹でかいのが、追ってきましたよ。」と紺野君。

「俺だけ、でかいの釣れてないんだよね。」と水谷君が言った直後にドカン。

30kg近いGTを4分ほどでランディングした。

「筋トレの成果が出てるじゃない。」とぼく。

「もっと早く上げるテクニックを教えてください。」と水谷君。

「じゃあ、こうして、ああして、こうするんだよ。」と教えると、横で聞いていた初鹿野君が今ヒットしたGTで、すぐに実践した。

「鈴木さん、これ使えますよ、ほら、もうあがった。簡単ですよ!!このテクニック!」

2分ほどで20kgGTが浮いてしまった。他のメンバーは唖然としてしまったけれど、GTは次々にヒットして、その都度みんな丸秘テクニックを試して納得したみたいである。

開発に5年もかけた丸秘テクニックも教えるには10分も掛からない。すぐにマスターされると、ちょっと寂しささえ覚えてしまう。

「誰にも教えるなよ!!」とぼくは念を押と

「あたりまえじゃーないすか!!」とみんな、頷いた。

が、その夜は、その丸秘テクニックの話で盛り上がってしまった。

“釣り師に秘密は守れない。” と思った。

あんまり教えないでおこうとも反省した。

 

 

写真左:カツオくんとダブルヒット S−POP170コノシロカラーは実に良くヒットする。

写真右:ランディングしたGTは頻繁に海水を掛けてすぐに逃がしてやった。

 

後編  嵐のマーマクヌドゥーそして晴天のシャビアニアトールに続く。

初鹿野くんのアオチビキ

 

旅の問い合わせ

ワンダーブルーTEL03-5433-7221

タックルの問い合わせ

シーマン・・   TEL0792-45-3412

シーブリーズ・・ TEL011-733-3888

使用したタックル

ロッド・・GIANT 86   YELLOWTAIL BG70   MONSTER CC

ルアー・・S-POPmonster170〜250 LONG PEN100〜110

ライン・・アバニ60〜80Lb  スーパーアバニ6号