FISHERMAN

 

 

 

 

 

 

ロッド・・MONSTER・CC61

ライン・・MAXPower6号

スペサーショックリーダー・・スーパーステルス100lb

 

 

 

 

 

クロカワカジキとの遭遇

2001/12

翌朝6時、与那国島の沖に向かうと、昨日までの凪はうそのように、波がたち始めていた。餌のキハダやカツオ、カンパチをジギングでカツオ君と釣り上げ始めると、みな大きくて、ライフベイトには向かない。その内、2kgぐらいの手頃なキハダが釣れたので、フックセットして根の上を流し始める。一時間ぐらい経った時、50m後方を流しているライフベイトの直近くにカジキのビル(角)が見えた。ロッドの穂先が、ばたつきだし餌のキハダが怯えているのがわかった。ロッドを手に持ってゆっくりとリールを巻いた。カジキはつられてボートに近づいてきた。20mまで引き寄せてリールを巻かずにロッドアクションでカジキを誘うとカジキはビルでベイトを跳ねつけた。水面に頭を出して首を左右に振り、キハダを呑み込もうとしている。ぼくはベールを返して、ラインをフリーにする。船長はニュートラルにしたが、ボートは惰性でゆっくりとカジキから離れていった。カジキはベイトを咥えたまま潜って行った。

2秒、3秒、5秒と自分の心臓の音が、時を刻む。カジキが呑み込むのを待っている時間は、長く感じているけれどせいぜい10秒だろう。金城船長が指で丸を作った。ぼくはドラッグを8kgに上げてからベールを返して、ロッドを脇に挟み両手でしっかり持って衝撃に備えた。船長はゆっくりとギヤを前進に入れる。2秒後、完全に魚とラインが一直線になった時、ぼくは綱を引くように強くあわせた。瞬間PEラインは針金のように更に直線となって、海面を切り裂いていく。ラインの後には、海水のヒレが出来て走り出し、リールは金属音に近い悲鳴をあげ、スプールが高速で廻りだす。今度はドラッグを直に緩めながら、ロッドをスピニングハーネスとドッグハーネスにセットした。

後は魚の動きに合わせてハンドドラッグでプレッシャーを掛け止めるだけなのだが、そう簡単に事が運ぶ訳が無い。ラインが100mまで引き出された時に、魚がジャンプして空中に舞い、2度3度と繰り返した。 PEラインは相当なウォータープレッシャーを受けているのに違いないわけで、ここで更にドラッグを少し緩めた。

しかし、カジキは飛ぶことでかなり疲労したに違いない。ジャンプが治まったところで、

ラインは150m引き出されていた。再びドラッグを上げて、魚を止めた。そこから魚の頭をこちらに向けて泳がせながら、ラインを巻き取っていく。ここでプレッシャーを掛けすぎると、魚は深海に潜ってしまい長時間のファイトにつながる。微妙な駆け引きであるけれど、ぼくはボートを動かさないで、魚の動きに合わせて、ラインを巻き取った。運が良いのだろう。魚がすんなりと50mまで近づいてくれたところで、金城さんのアドバイスが聞こえた。

「まだ、元気過ぎるから、もう一度走らせて!」

ぼくはポンピングで魚を刺激すると、また、ラインが引き出されていく。

ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!・・・・・

 

切れないラインシステムと外れないフック

「あのハリは外れないよ。」と金城さんは笑って続けた。PEラインは180m出され残りが70mとなったところで、魚が止まった。ゆっくりと引き寄せてから、ボートの前方斜めに近づくように誘導する。ラインキャパシティーの安全のために、ボートを最小限に動かし、魚との距離100mのところで止めてもらった。ここからが勝負である。

ゆっくりとしたポンピングと魚の泳ぎをシンクロさせると50mの所まで、近づいてきた。ぼくは再び船長を見ると、ランディングの用意に入っていてこちらを見てくれない。引き寄せても良いと判断して、更にポンピングを続けるとSABリーダーが見え始めた。小さいノットが近づき、リールに巻き込まれシステムが正常に機能している事が解った。魚は海面下、10mの所を、疲れきって、ボートに向かっているはずであるから、ここから浮かせにかかる。波の間にスプリットリングスイベルが見えた時、尾びれと背びれが海面に現れて、水を切った。

「もっと巻いて!」と船長の指示が飛ぶ。

ぼくはゆっくりとラインを巻くと、ショックリーダーは呆気なく船長の手の中に入って、釣りは終わった。

約9分のファイトである。

 

鈴木文雄の連載“南海島小紀行”より抜粋